低圧注入工法の問題点を工事現場から報告したいと思います 全国に数少ない低圧注入工事を生業とする専門店への啓蒙も微力ですが広く行いたいと考えています

フロッグの行く先

コンクリートのひび割れ補修の専門です

ひび割れ補修の低圧注入は信頼を取り戻せるか

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写真のなかで占有率が比較的高い器具は注射器タイプの輪ゴムの力で注入する器具です。

業界でこの輪ゴムタイプの商品を見せるとかなりの人が知ってるようです。
その歴史はかなり古く30年前ぐらいからあるのではないかと思います。
その機能はその当時から殆ど改良されていません。

この商品と殆ど似ている製品が昨年他の会社から発売されています。
特許が無いにしてもこれ程そっくりな製品を造って販売すると言うのは日本人の会社では珍しいと思いますね。
偽ブランド品のようですね。

このタイプの製品を造っているのは2社とも国内の上場企業なので更に驚きますね。

もっとも新しい方は器具を取り外した時に注入した樹脂が戻らないように台座部分に逆止弁を取り付けたようですが、どちらにしてもそっくりの製品です。

低圧注入の工法が歴史があるにもかかわらずなかなか発展しない理由については何回もこのブログで書いていますが、その第一の理由はひび割れの中に樹脂が入っていなかったなど施工の不確実性にあります。

防水にしてもシーリングにしても吹き付け仕上げにしても施工したその結果は直ちに解りますが、ひび割れの注入に関してはその結果は大掛りな試験をしない限り見えないわけですから、いい加減な注入工事をしても指摘できないという難しさがあります。

この輪ゴムで注入する器具には確かに注入はできるのですが、それこそ余程の時間と意識を持った人でなければなかなか確実に注入をするというのは難しいという製品なのです。

その原因の一つに樹脂を簡単に注ぎ足しが出来ないと言う事があります。

写真の下の列の細長い器具以外は皆樹脂の注入口があります。(注ぎ足し機能)

ひび割れの中は遊離石灰があったりカビがあったり更にひび割れの中は広くなっていたり、巣穴があったりで樹脂の接着にはかなりの難しいものがあります。

例えば物を接着させる時には必ずそれぞれの表面を綺麗にしてから接着剤をつけて接着させます。

コンクリートとコンクリートを接着させる場合すら表面を清掃して水で湿らせてから接着させます。
そうしなければ確実には接着しないのですから。

ひび割れの中をそんな風に考えるとそのままの状態で一種類の樹脂だけで本当に接着するのだろうかと疑問に思います。

そこでこの注ぎ足し機能が必要となるのです。(注入口)
ひび割れの中のカビとか粉分などの清掃はできませんからその対策として超低粘度(より柔らかい)の樹脂を先に注入してそれらの物に浸透させてしまい接着性を上げようというのです。

しかし柔らかい樹脂を入れただけではこんどはひび割れの中でせっかくの樹脂が流下といって下のほうへ流れ出してしまうと言う恐れがあります。

ひび割れ幅にはそれに合った(流下しない)硬さの樹脂がありますから仕上げに今度はその適合樹脂を再度注入するのです。

最初に入れる樹脂はプライマーの役目をさせて二度目、三度目の注入は充填を目的とするのです。

こんな説明をするとなんとなく解ってもらえると思いますが、では何故、注ぎ足し機能がない器具が売れているのか、しかも占有率が高いというのは何故なのか理解できますか。

私も正直なところ深くは解りませんが、それで通っている業界だからでしょうね。

このことが低圧注入工事が古くからあるにもかかわらず未だに不確実な工法と見られている大きな原因だと思うのです。

しかも微細なひび割れの中に樹脂を小さな力で押し入れるのにいきなり固めの樹脂ではなかなか入りにくいものなのです。
最初に少しでも柔らかい樹脂を入れておくと水みちをつけるといって次の硬さの樹脂が抵抗が少なくなって入りやすいのです。

この手の器具を使っている現場をみると殆どの器具のところから樹脂が漏れています。
漏れていると言う事はひび割れの中には入っていないと言う事だと思うのですが、現場でその事を聞くと
ひび割れの中はもう一杯なので溢れているのですと言う・・・・。
一杯になったら裏の方には漏れ出すでしょうが何故注入している側からなのか・・。

素人よりも理屈が解っていないようです。

このような元々注ぎ足し機能が簡単には出来ない器具の場合はめんどうでも器具を外して輪ゴムも外して
再度器具に樹脂を充填してから組み立てて注入すれば出来ない事は無いのですが普通の職人さんはまずやらないでしょう。
一度で終わりです。

メーカーは器具を外してすれば注ぎ足しできると言っていますが、外すということは圧力が掛かった樹脂がひび割れの中にはあるのですからせっかく入れた樹脂が溢れてきます。
手は汚れる、現場も溢れた樹脂で汚れる・・・殆どの人は注ぎ足し工事は行いません。
その時に樹脂が入っていない器具のものも入っている器具のものもそれで終わりなのです。

このメーカーは対価に値する仕事と言う言葉は知っているのでしょうか。

でも、救いはこの手の器具を使っている職人さんは専門の人は殆ど居ないと言う事です。
一年に数回程度注入工事をする人達が圧倒的に多いですね。

注入工事の頻度が高い工事店は安くて機能が優れたものを使うと言うのは当たり前のことです。

でも占有率が高いというのは、メーカーの知名度が高いと言う事と元請の建設会社の人達の知識がないという事のようです。

目視で結果はすぐには解らない工事ですから職人が終わったと言えば終わりと言う事なのです。

この程度で1m当り9000円(設計価格)では高すぎるでしょう。

今回は批判めいた事を書いていますがこの手の器具については全くひび割れの中に樹脂が入らないといっている訳ではありません。

ひび割れ幅が大きい場合とか、手間を掛けて注ぎ足し作業をやれば他の注ぎ足し機能があるものと同じような結果にはなると思います。

余程の知識と意識が必要ですが。