低圧注入工法の問題点を工事現場から報告したいと思います 全国に数少ない低圧注入工事を生業とする専門店への啓蒙も微力ですが広く行いたいと考えています

フロッグの行く先

コンクリートのひび割れ補修の専門です

モルタルとタイルの浮きは落下すれば重大事故のおそれ

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上の写真の左側は一般的に使用されている全ネジステンレスピンです。

ピンは錆びる事が無いようにSUS304という規格に合格していなければいけません。

外壁のモルタルが躯体のコンクリートと肌別れしている箇所がいわゆるモルタルの浮き部分です。

補修するには浮いている部分に躯体まで穴を開けて、穿孔時に出てくるコンクリートの切粉を下の写真の

ワンダーガンにて除去した後エポキシ樹脂を高圧にて注入します。

(一般の工事店ではこのようなガンは残念ながら使いません。コンプレッサーのホースが邪魔で厭だそう です。せっかく開発したのに・・。)

昔は樹脂だけの充填で終わりだったのですが、いつの頃からは詳しくは覚えていませんが、この穴の中に

ステンレスピンを挿入して完了とするというような方法になりました。


誰が考え出したのか解りませんが、何故ステンレスピンを挿入するのかというとエポキシ樹脂を補強する

為らしいのです。

鉄筋コンクリートの組み合わせとまるで同じなので考え出したのは建築会社の監督さんかな?

無垢のままのエポキシ樹脂の場合とその中にピンを混入した場合ではせん断強度と引張り強度は確かにピ

ンが有るほうがはるかに強いのは理解できます。

でも良く考えてみればこの場合は強いのは穴の中の強度だけの話ですから、いい仕事をするには肝心の浮

いている隙間には確実に樹脂を充填しなければいけません。



穴を穿孔し切り粉を除去し(しない人もいる)そして注入する。

仕上げは注入した穴にピンを挿入し、はみ出した樹脂は拭き取る。

そして完了となります。


注入した樹脂が確実に入っているか否かは樹脂が硬化してから打診棒等で表面を叩いてその反響する音で

確認します。

確かに樹脂は入っているけど本当に接着しているのかどうかについての判断は建研式の引張り試験機で引

張り試験を行います。

民間の場合は殆どこの試験は行いません。


この注入の方法は業界ではアンカーピンニング工法と言います。


写真の右側に紹介しているピンは自身が開脚して下地にアンカーを打ち込む方法です。

これもアンカーピン工法と言います。

樹脂の中にピンを挿入するだけのものをアンカーピンニング工法と言っていますが、果たしてアンカー効

果はあるのでしょうか。(ありませんよ・・・)


実際の現場に行くと、手早くする為に穴の中の切り粉をそのままの状態にしていきなり樹脂を注入するよ

うな方法が盛んに行なわれていますが、大丈夫でしょうか。

樹脂がセメントの切り粉と混ざってしまうと隙間に入りにくくなるし接着力も極端に劣ります。



穴を開けたら必ずガンで切り粉を除去して穴の中をきれいにして、そして注入するべきですね。

10年前頃まではこの浮き注入の仕事が多くありましたが最近はめっきり少なくなりました。

モルタル補修の建物が老朽化して建替えてしまっているのでしょう。


今は浮き注入と言えばタイルの浮きが多くなりました。

タイルの場合は色々と考え方が有るのでしょうが、私は浮いているタイルを剥がして再度貼りなおすのが

一番いいと思っています。

どうしても注入をしたいならタイルの真ん中に穴を開けてそこに注入してそれこそピンを挿入するといい

と思います。

タイル一枚ぐらいならこの方法のピンニングで強度は充分でしょう。

落下させて事故を起こすと、その責任は施工者ではなく施主になると言う判例がありますから施主は施工

店に任せきりでは駄目ですよ。


少しは勉強したほうがいいですね。

予算の許す限り浮き注入は注入口付きアンカーピンニングで注入するほうが良いと思いますよ。

意匠よりは安全優先です。


東京の某?東京大付属病院のレンガタイルが剥がれて高級車の屋根に当りその対応に悩んでいた施設の担

当の方の顔を今も思い出します。

早く予算をとって補修しておけば良かった・・・・とか。


もう忘れたかな・・・未熟だったメーカーのおじさんの事・・・。