昨日と今日は雨。
昨日は台東区の現場で現場調査でした。
現場ではひび割れの幅が大きいのにびっくりです。
ひび割れを注入補修した場合に建物の補強はできるのかという質問については次のように答えます。
ひび割れの注入の場合は、耐震補強のように今までの構造に他の部材(鉄骨など)を加えて今までの強度以上に補強するというような事はありません。
柱、梁にひび割れが発生している場合は厳密に言えば本来の強度よりは少なくとも強度は落ちている筈なのでその部分に注入することによってひび割れする前の強度には戻す事が出来ます。
元々の建物の強度に戻す事はできてもそれ以上の補強にはなりません。
ひび割れた状態よりは補強できるという事です。
ひび割れが貫通している場合はその隙間の部分の強度は中にある鉄筋のみの強度だけとなります。
ひび割れが発生しても建物の本来の強度にはさほど影響しないという一般的な意見は、ひび割れが建物の
面積に対してほんの僅かであるという事を前提としています。
ひび割れそのものが建物の強度とは関係がないというわけではありません。
建物の場合も建物の力が常時掛かっている柱、梁、耐力壁に大きなひび割れが発生している場合は間違いなく強度が少なくともひび割れる前と同じではありません。
話は変わりますが写真のドリルは私が使用しているモルタルの浮き注入工事の時に使用するドリルです
前回も報告していますが躯体と肌別れしているモルタルのその隙間は殆どの場合は0.1㎜~0.6㎜程度なの
です。
この微細な隙間に穴を開けるのですが、直径は全ネジの場合は5㎜、そして注入口付きアンカーピンの場
合は6.6㎜です。
そして深さはモルタル部分の30㎜とコンクリート躯体へ20㎜以上穿孔します。
この穴あけの時にドリルの種類についての問題が有るのです。
これらのコンクリートを穿孔するドリルは振動ドリルといわれているものなのですが、キリでコンクリー
トを叩きながら進んでいくシステムとなっています。
キリに螺旋の溝は叩いて崩したコンクリートの粉を排出する機能のためにあります。
今回、この排出してくる切り粉の問題を報告したいのです。
ドリルのメーカーの製品によっては穿孔時にこの切り粉を微細な隙間にこすり付けてしまうという癖?を
持つたものもあります。
微細な隙間にこの切り粉が詰まってしまうという問題は、その後に注入する樹脂が侵入しないという事に
なります。
隙間が大きければ多少の切り粉が詰まっても樹脂で押し広げる事が出来ますが、微細な隙間に大きな切り
粉の粒子が押し付けられれば殆ど詰まってしまいます。
首都圏の注入現場では殆どの職人さんは日立製のものが多く見られます。
国産の振動ドリルはハンマーの動きが切り粉を詰めにくいような回転になっているようです。
浮き注入が盛んなときに実際の現場で各社のドリルで穿孔し切り粉の残り具合を4㎜の医療用のボアスコ
ープ(内視鏡)で調べたことがあります。
穿孔の高性能のドイツのヒルティのキリは楕円形に回転するのか、切り粉を隙間に詰めてしまうという事
が解りました。
マキタ、日立、ボッシュについては切り粉を詰める事はありますが強くこすり付けないと言う事が解りま
した。
当時は軽くて高性能なヒルティを使う職人さんが多かったために、注入した樹脂がなかなか入らなくて苦
労したようです。
この業界が未成熟なのは例えばこんな重要な事の研究も建設会社、メーカーでは殆どやっていない事なの
です。
もっとも道具はどうあれ浮いた部分に樹脂で接着できればよい訳で、たとえ玩具の水鉄砲で入れてもなん
の問題もないのですが・・・。
切り粉の対策については、小さなゴムのシュポシュポというカメラレンズを磨くような物の大型で除去し
ている職人さんと、なんにも処理をしない職人さんがあるようです。
なんにも処理をしない職人さんは、そのままでは入らない場合が多いので先端ノズルを穴に叩き込んで高
圧でモルタルの隙間を更に押し広げて注入しているようです。
エポキシ樹脂は粉と混ざり合いながら侵入していきますが、果たして接着力は出ているのでしょうか
曖昧な結果の注入であつても全国で大して重大事故にもなっていない事を考えれば・・それはそれで許さ
れるのかなぁと思うのです。
人間はある程度いい加減な方がいいのかも・・・と気付くのが遅すぎたのかもしれません。