コンクリートの躯体に塗りもしくは貼り付けられたモルタル、タイルの浮いた部分に接着剤を注入してそ
の部材を固定して落下等の重大事故を防ぐという方法が一般的に言う浮き注入工法というものです。
注入工事とはこの浮き部の注入とひび割れた部分に低圧注入工法で注入する2つの方法があります
低圧注入工法が普及していない時代には、ひび割れた隙間にもその部分に穿孔して浮き注入工法と同じ
ように高圧で注入していたという今では考えられない事を平気で施工していました
当時の建設省ではひび割れた個所に5mmほどの穴を空けて接着剤で5mm径の銅パイプを埋め込んでそし
てグリスポンプで注入しなさいという仕様だったと記憶しています
しかも高粘度の樹脂を・・・・・それで本当に樹脂が入るのなら今ならノーベル賞を貰えるかも・・
その当時の職人さんは国が研究して施工方法を指定しているのだから間違いはないのに・・なんと自分の
技術がないのかと悩んだと思います。
コア抜きの検査ではどう凌いだのでしょうか・・・・知らないという事は恐ろしいことだと思います
このひび割れの低圧注入工事については1986年から1988年に官民共同研究を行い1992年になってやっと
建設省の共通仕様書に採用されています
それまでの古い仕様書によつて施工されたひび割れ補修は大丈夫だったのでしょうか
多分、首都高速道路の運河に掛っている橋桁などの劣化を見るとその当時の施工だったのかと推察されま
すよね・・・
ひび割れに何かを塗りたくってコンクリートはボロホロにになっているものね。よくも今までに崩壊しな
かったものだと感心しますよね・・
さて、今回はモルタル、タイルの浮き部に行う浮き注入工法について報告します
この工法は今では本当に少なくなってきましたが、一昔前までは注入工事と言えばこの浮き注入工事でし
た。
昭和40年代頃に始まった国内の建築ラッシュに造られた鉄筋コンクリートの建物は全てその不陸調整のた
めにその修正にモルタルが塗りつけられていてその工法は60年初め頃まで続いたと思います。
経年劣化とともにこのモルタルが剥がれ始めてこのモルタルを固定するという仕事が浮き注入工事の始ま
りだったと思います。
30年前頃にはこの浮き注入工事の盛んな時代だったと思います
その当時に行われていた方法が今でも仕様書には変化なく書いてあります
その当時と違うのは浮いている面にすべて樹脂を充填するのまではなく穿孔した部分に25ccを注入する
となっています。
昔のように浮いている部分に全面に注入するという事にはなっていません
経験から解ったのでしょうが、注入時のその圧力で健全な部分の共浮きとか膨れが発生するという危険が
あるという事で、部分注入によって固定するという事になったようです。
今はこのようなモルタルの浮き注入は殆どなくなりましたが、それに代わってタイルの浮き部の注入工事
が増えてきているようですが、昔のモルタルの浮き面積に比べると非常に少なくなっています。
施工の方法は
1 最初に5mm径の穿孔をします
2 穴の中の切粉を圧搾空気等で清掃します
3 グリスポンプで高粘度型のエポキシ樹脂を25cc程度注入します
4 4mm径、長さ40~50mm長さの全ネジステンレスピンを挿入します
5 はみ出した樹脂を取り樹脂モルタルで穴埋め
6 検査 完了となります
検査の方法は打診棒で音で確認します
以上ですが穿孔する数はタイルの場合は1m2当たり16穴が標準ですが、私の場合は落下したら危険な場所
については多少穿孔を多くします
しかし今は、私はこのタイルの浮きの仕事は殆ど断っています
タイルの浮はコンクリートに貼りつけたタイルが剥がれているという理由がはっきりしているのですか
ら、ならばそのタイルを剥がして再度貼りなおした方が確実です
接着剤を注入しても本当に接着しているかどうかは見えもしないし、その後に引っ張り試験などやらない
のですから重大事故防止の仕事としては心配なのです。
エポキシ樹脂は湿潤面でも接着するなどと言われていますが、それは濡れている程度の問題で手で触って
手が湿る程だとエポキシ樹脂は白く変化して硬化してもその強度はあまり期待できません
タイルの裏の見えない内部に自信がありますか、湿気とかあったら大丈夫ですか・・・
施工後にタイルが落下して重大事故になつたら責任が取れますか
在庫に同じタイルがなくとも安全と意匠と計りにかけるまでもないと思うのですが
参考ですが下のスケッチは共通仕様書に書いてある穿孔する穴の数量と位置です
タイルの場合は250mm間隔で注入しなさいという事です