外壁のタイルが落下していたという事で、急遽全面に亘って浮いているタイルを探して注入による補修を
行いました。
このブログでも何度もタイルの浮きについては新しくタイルを貼りかえるべきだとの私の考え方を報告し
ていますが今回は意に反して注入工法による補修を施工しています。
何故このような仕事を引き受けたのかについては次の事によります
今回の仕様書では安全に対する意識が非常に強くて注入の圧力によって発生するいわゆる「タイルの共浮
き」も考慮している事と、私の本来の仕事のひび割れ補修の低圧注入工法が多くあるという事なので引き
受けるという事になりました。
決して仕事に対して我儘を言っている訳ではありませんが、タイルの浮き補修については他の仕事とは
基本的に違っていて、それは人身事故に関わるという仕事だからこそ少しでも不安な要素があれば避ける
べきだと思うからなのです。
今回は注入口を100穴/m2ピンニング工法となっているのです
国土交通省の仕様書では一般的にはタイルの浮きについては16穴/m2となっている事に比べるとその穿孔
の注入口がいかに多いかが解ると思います。
写真を見て頂くと解ると思いますがタイル一枚づつに樹脂を接着させようという考え方なのです
現在の建物のに貼り付けているタイルは躯体(コンクリート)に僅かの補修をして直接接着剤でタイルを
貼り付けています。
一昔前までは躯体(コンクリート)に30㎜ほどの補修モルタルを塗ってその上に接着剤等でタイルを貼り
付けていたのですが、今は躯体の状態によっては直接タイルを貼り付けています。
不陸とかバリの箇所には薄く補修材を塗布してからタイルを接着剤で張り付けているようです
浮いているタイルの傍の目地部に穿孔してエポキシ樹脂を注入してそしてステンレス製の全ネジピンを
挿入してそして埋め戻して完了なのですが
一体このピンは何のために挿入しているのでしょうか
私はタイルの浮きの場合にはこのピンは必要が無いと思っています
そもそもこのピンはモルタルの浮きなのかタイルの浮きなのかが解らなかった時代に安全のためにと考え
られたものです。
注入するエポキシ樹脂は接着力は強力なのですが曲げ(せん断強度)などに弱いという事から複合させよう
という考え方からも採用されたものです。
しかし今の建物には躯体にモルタルを付けるという事は殆どありません
タイルの下には薄い下地処理樹脂モルタル程度で直接接着剤でタイルを貼り付けているような訳ですから
深い穴を空けてピンなどを挿入する必要性は殆ど無いと思います
タイルに穿孔してピンの頭に引っ掛かりなどがあれば確かに補強の意味はありますが、現実には目地より
も深く押し込んでしまうのですから殆どこのピンニングの意味が無いと思うのです
タイルの接着剤が剥がれているのならもう一度接着剤を注入してタイルを固定するという事で良いと思う
のです。
官公庁は一度決めたことは時代が変わってもなかなか対応しないからそのまま残っているのだと思います
無いよりはあった方がいいという考えなのかもしれません が・・・・。
エポキシ樹脂は一般には高粘度型(グリス状)のを使用しますが、今回は共浮を防ぐためにこの高粘度型の
樹脂に低粘度型の樹脂を僅か混練しています。
樹脂は柔らかいほど抵抗が少なくなりますから共浮は防いでくれます
施工する方は一度注入したのだから時間がたって再び共浮しても責任は無いよと言っても・・・・
お金を出したオーナーさんからすれば例え注入して完了しても検査の時に更にタイルが浮いているのなら
それは駄目です・・となります。
だっ、だから余分に見積もりをするべきだと言っているでしょう・・。
目的は重大事故防止の仕事なのですからね。