低圧注入工法の問題点を工事現場から報告したいと思います 全国に数少ない低圧注入工事を生業とする専門店への啓蒙も微力ですが広く行いたいと考えています

フロッグの行く先

コンクリートのひび割れ補修の専門です

エントランス床のタイルの浮き補修

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最近はブログ更新の頻度が少なくなってきてとても気になっています

さして理由は無いのですが多少は飽いてきたのかとも思います


この仕事をしている限りは決して諦めることなく、非常に微力な啓蒙ですが細々でも続けたいとは思って

います。


「低圧注入器具はこのような機能が必要で、その施工技術はこのようにして欲しい・・」


という事が啓蒙の内容なのですが、簡単なようでもその普及はなかなかなのです。


さて、今日は先日施工したマンションの玄関そしエントランスの床に貼ってあるタイルの浮き補修につい

て報告致します。


マンションは築後4年目ですが、床のタイルが所々にスラブから接着剤が剥がれていて浮いています

入居者の方から指摘があったそうです。


靴の硬いヒールで歩くとタイルの浮き特有の音がしたのだと思います

たしかに、このまま放置しているといずれタイルは割れてしまいます


原因はタイルの接着剤の接着力が経日変化によって剥がれたものですが、その考えられる具体的な原因は

何かと聞かれると・・


「その要因は沢山あるのですがはっきりとした原因は今では断定はできません」としか返答はできません


施工時の接着剤の混合に問題があったのか、タイルの接着面に湿気があったのか、コンクリート表面にエ

フロ等が付着していたのか、もしくは躯体にひび割れが発生したのか等々


一般的には躯体にひび割れが発生した時に見られるタイルの状態は次のようになります


タイルと躯体との接着が良ければ躯体のひび割れと同じようにタイルがひび割れます

タイルと躯体の接着力が弱ければタイルは剥がれて浮いてしまいます


原因はさておき補修します


今回は振動ドリルで直径5㎜のキリで深さ30㎜の穴を目地部分に穿孔します

このように床面の場合はよく言われる「ピンニング工法」は必要ありません

ピンニング工法は穿孔した穴に樹脂を注入した後にステンレスの全ネジピンを挿入しておく、というよう

な方法なのですが、この目的は注入する樹脂が硬くて曲りには弱いために樹脂の補強のために挿入すると

いう工法です。

私はこの考え方には疑問を持っています

国土交通省の共通仕様書にはかなり昔からこの方法を指定していますが、今のタイルの貼り方からすれば

殆ど意味がないのではないかと考えています。


昔の建物のようにタイルの下に20~30㎜厚のモルタルを付けてからタイルを貼る工法のような場合なら

その両方の浮きに対応するためにピンによる補強は必要ですが、今のタイルの貼り方はそのような方法で

はありません。


今はというより約30年以上も前からタイルは躯体(コンクリート)に直接接着剤で貼る方法なのです

コンクリートの不陸等をモルタルで下地調整などはしません

つまり今の建物はタイルの浮き(剥がれ)はタイルと接着剤の剥がれか接着剤とコンクリートの剥がれかに

限られています。


時に躯体の補修材とコンクリートが剥がれている場合もありますが


したがって浮き部の補修は剥がれた隙間にエポキシ樹脂等を注入、充填して再度接着させる事が目的とな

ります。

ピンのようなものは必要がありません



今回はこの穿孔した穴からエポキシ樹脂の高粘度型をグリスポンプで押し入れます

本来ならこのタイルの浮いている隙間の幅を知ることが必要なのですが、現実には測ることができません

ので強引に硬い樹脂を押し入れます。


ここで疑問を持つ方がいればうれしいですが・・・・・。


コンクリートのひび割れの場合は器具を取り付けていわゆる低圧注入工法でしか樹脂は侵入しない筈な

のに、タイルの浮きも同じ隙間かも知れないのになぜ低圧工法ではないの・・・?


そうなのです本来なら変なのです

タイルが浮いている場合はその浮き幅はたしかに0.1㎜とか0.5㎜幅がある筈なのです

浮き幅が1㎜幅もあればタイルが膨れていることが目視でもわかりますがほとんどの場合はタイルの膨れ

はありません。


つまり、その浮き幅は0.3㎜とか0,5㎜幅が多いのです

その程度の浮き幅でどうして高粘度型の樹脂が、しかも吐出する力が100㎏以上もあるグリスポンプなど

で注入ができるのでしょうか・・・。


もしもこの方法で隙間に樹脂を充填できるのなら低圧工法なんて面倒なことは必要ないのでは・・


タイルの浮きの場合に低圧注入工法が本来は正しい方法なのですが、この高圧の工法でも問題はあっても

殆ど注入で接着できるので落下の防止については防止できるとして普及しているのです。


穿孔した穴にグリスポンプの先端を差し込み漏れないようにウェスを挟んで強引に樹脂を注入すると隙間

幅が小さい個所は注入する力によつてタイルが浮き上がってその隙間が大きくなります。

そして硬い樹脂が入り込んでいくのです

したがって樹脂を入れすぎるとタイルは割れてしまうか、もしくはタイルが目地を壊して更に浮き上がっ

てしまいます。

このような工法ですから場合によっては正常に接着しているタイルまでも押し剥がしてしまう場合があ

ります。

これをタイルの共浮き現象と言います。


タイルの浮き補修は接着剤の押す力でタイルを押し広げて(共浮きさせて)その隙間に樹脂を注入するとい

う方法なのです。

今回のように床の場合はこの方法が施工期間も少なくて良いと思うのですが、外壁の場合は色々と考える

事があると思います。


タイルが剥がれて落下している場合などはその部分だけが特別の方法でタイルを貼ったという訳ではなく

施工は同じ職人さんが同じように貼り付けているのですから他の箇所も例え浮いていなくとも不安になり

ます。


私は外壁に限っては樹脂の注入で補修するのではなくて再度タイルの貼り直しがベストだと思います

事は重大事故防止の仕事なのですから確実な方法で修理すべきだと思います