低圧注入工法の問題点を工事現場から報告したいと思います 全国に数少ない低圧注入工事を生業とする専門店への啓蒙も微力ですが広く行いたいと考えています

フロッグの行く先

コンクリートのひび割れ補修の専門です

コンクリートのひび割れ注入施工を1日で

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先週の連休には引き渡して1年目のマンションのひび割れ補修でした

ひび割れた箇所がベランダにあるために室内を通る必要があります

入居者にとっては折角の休日にその補修のために部屋に釘付けになります


当然の事ながら補修はして欲しいけど兎に角早く終わって欲しい・・・というのは当然の要求だとは思い

ます。


そこで色々と検討の結果、1日は無理だとしても1日半ならなんとか施工できますよ・・と言う事で施工に

かかりました。


低圧注入工法もそれを生業としている技術者でも1日だけの施工はとても無理と考えている方が殆どでは

ないかと思いますが、条件によっては1日でもなんとかできます。


参考ですが、その方法を以下に・・・・。


低圧注入工法が決して1日では施工完了は出来ないという理由はそれぞれの材料の硬化時間にあると思い

ます。


まず、注入するエポキシ樹脂は各社ともその機能は似ていますが、可使時間は(冬場)3~5時間も掛かり初

期の硬化は7~10時間もかかります。

器具をセットして注入して、そしてそれらを取り外すのはこの初期硬化にならないと外せません

硬化もしないのに器具、シール材を外すと、当然の事ですが折角圧力を掛けて注入した樹脂がすぐに逆流

して壁面等に流れ出してきます。


樹脂はある程度硬化しなければ器具等は外せないのです。


最近、時々見かけたり聞いたりしますが器具の費用を安くするために器具の付回しをする業者がいます。


取り付けたら樹脂の進入に関係なく、数分で外して隣の台座に取り付けるという方法がありますが、折角

の樹脂は固まらない内に外してしまうから樹脂は殆ど漏れてしまいます。



次の問題点は仮止めシール材の剥離性タイプの硬化時間です。

建物の下地(塗材)を傷をつけないで注入するにはこの剥離性タイプが必要ですが、この硬化時間は7~10

時間も掛かるのです。


この剥離性のシール材は2成分型も有り(ウレタン系)硬化促進剤も用意されていますが、冬場に使用する

と最短でも4~6時間以上は養生が必要です。

さほど硬化は短くはありません。


また、今回は使用しませんが、仮止めシール材は速乾性のものもあります。

この速乾性タイプはエポキシ系ですから撤去する時にはバーナーで熱して削り取るという方法になり

ます。

当然ですが下地の塗装面などは一緒に削り取られてしまいます。



今回の施工については下地は傷を付け無いという事が条件ですから、剥離性のシール材は絶対に必要です


注入材については、エポキシ樹脂を使うとどんなに施工数量が少ないとしても2日半は必要となってきま

す。


そこで、今回はあまり好きではありませんがアクリル系の注入材を使用することにしました

この材料は2成分型なのですが、混合してからの可使時間は僅か10分程度で、初期硬化(ゲル化)は10~15

分程度なのです。

更に、接着強度(引っ張り)はエポキシ樹脂と比べてもそんなには弱くは無いのですが、気になるのはチキ

ソ性が無くさらさらしているのです。

そうです注入後にひび割れの中で流下してしまうとの不安があるのです。


今回の場合はひび割れの箇所がはっきりとわかっていますから、樹脂が進む時間は短時間でも良いのです

が。


この注入材は一般的なひび割れの箇所には無理だと思います。


そもそも低圧注入工法とは樹脂を小さな力でゆっくりと時間を掛けて押し入れるという方法ですから、そ

んなに早く固まってしまってはひび割れの奥までは到達ができません。

しかもこの材料は真空状態の箇所ではすぐに固まってしまうという変わった性能となっています

そうなのです、今回もフロッグのタンクの中の樹脂は僅か10分そこそこで固まってしまったのです


10分の内に反対側に漏れてくるのを確認して注入を行ったのですが・・・。


1日目はフロッグと仮止めシールをセットして、翌日に注入して20分後に取り外したのです。


結果は1日と半日で引渡したのです。



そこで1日で施工できる条件は

下地がコンクリート粗面の場合など下地を多少傷が付いても良いというような場合

そしてコンクリートの奥行きが100㎜以内の場合

そしてひび割れ幅が0.4㎜以上の場合

更に施工数量が20m程度以内の場合


そして、使う材料は仮止めシールは速乾のエポキシ系の仮止め材を使い、注入はこのアクリル系の注入材

を使用します。



施工期間が1日しかない場合は、お試しあれ・・・。



それにしてもこのアクリル系の注入材を造っているメーカーは、低圧注入工法というものを知っているの

でしょうか。

カタログには注射器タイプの器具で注入している写真がありますが、ひび割れの中に樹脂が瞬時に広がる

とでも思っているのでしょうか。



実験してみれば樹脂の広がりはいかに時間がかかるが簡単に解る筈なのに・・・・・。


注入している日は樹脂は漏れていなかったのに翌日に見るととんでもない箇所から樹脂が漏れ出している

場合があります。



小さな力で長く時間を掛けて樹脂を押すからこそ、微細なひび割れ幅にも上にも下にも広がっていくので

すよ。


可使時間(粘りが出てくる時間)が10分程度では樹脂はひび割れの奥までは到達できませんし、更には空気

が少ないと更に硬化が早くなるという性能では、低圧注入工法では適当な仕事しかできないという事にな

りますよ。


ひび割れが10m程度の注入にしても器具は最低でも40コも取り付けるのですよ。

1コの器具に注入するには1分は必要でしょう、40コで40分も掛かりますよ・・・。

可使時間が10分程度ではどうしますか?

本当にひび割れの中に樹脂を充填するという目的は解っているのでしょうか・・・・。