低圧注入工法の問題点を工事現場から報告したいと思います 全国に数少ない低圧注入工事を生業とする専門店への啓蒙も微力ですが広く行いたいと考えています

フロッグの行く先

コンクリートのひび割れ補修の専門です

ひび割れ補修の方法は大まかには3通りです

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ひび割れを補修するには3つの方法がありますが、前回に報告しましたように補修するひび割れが大きくて常に動きがある場合と殆ど動きが無いものとに区別する事が大切でその判断によって方法を選定します
 
Uカツト工法(動きがある場合の方法)
この工法はひび割れの幅を10㎜深さを10㎜に広げ(削る)て溝を造り目地状態にします。そしてその溝の中に弾性シーリング材もしくは可とう性エポキシ樹脂(粘土のような塑性)を充填します。これによって密封し防水しようというものです。充填しているものはゴム弾性と不乾燥のパテのようなものですからひび割れが動いても追従できるというわけです。

この方法は安く施工できて一日で完了します。技術もあまり必要とはしません。

欠点としてはコンクリートを削って溝を造る訳ですから大きな音と粉塵が多くてとても室内などでは使えません。

そしてひび割れがサッシ又は庇まである場合はサッシ、庇などに傷が付くためにひび割れの最後までは削れないので肝心の雨水が侵入してくる箇所などが施工出来ない。

そしてなによりも一番の不満は将来において施工跡がミミズが這ったようにシミが出る場合が多い。今はシーリング材も仕上げ材が変色しないようにノンブリードタイプも開発されましたが所詮コンクリートを削り取って異種のものを充填する訳ですからどうしてもその跡が残ってしまいます。

動かないひび割れにこの工法を採用したら補強としては全く期待できません。
簡単で安いのであまり意識の無い建築会社の場合はひび割れ補修というとこの方法を採用する傾向があります。

ひび割れ幅が1㎜以上というのは通常では殆どありませんからこの工法は少ない筈なのですが大まかですが比率でみると圧倒的にこの方法が多い。残念ですがそうなのです。

改修のときぐらいはオーナーさんも少しは勉強して欲しいですね。

安い事は全てに優先ではいい建物にはならないと思います。

確実に補強が出来て耐久性にも優れる低圧注入工法は高価という事とあまり普及していない(建築会社等に関心がない)という事が少ない原因です。

自分が住んでいる建物の壁にミミズが這ったような跡がそこらじゅうにあったら厭ですよね。街でよく見かける風景ですがオーナーさんはあまり気にはしないのでしょうか。
 
自動式低圧樹脂注入工法(エポキシ樹脂を注入)
この工法は普及が遅いのですが実際は既に約25年も前からあった方法です。現場で施工する職人に対しての国家資格だって21年前からあります。

微細なひび割れの中に接着剤(エポキシ樹脂が主)を注入する方法ですが注入する器具をひび割れの上に取り付けて廻りを漏れないように処理をしてからこの器具の中に圧力を掛けて接着剤を押し入れます。
何故微細なひび割れの中に樹脂が入っていくのかのメカニズムは台風時に起きる圧力の差を原理としています。

樹脂をひび割れの中に入れるときの圧力は低圧と言って1~3kgの力です。あまり圧力を上げると反発力が発生して決して樹脂はひび割れの中に入っていきません。
ひび割れ幅が大きいと圧力は大きくても入りますが微細なひび割れ幅の場合は3kg程度までです。
この工法の場合には色々な知識と経験が必要です。

 柔らかい樹脂を大きなひび割れ幅の箇所に注入すると簡単にどんどん入っていきますが樹脂が柔らかすぎるとせっかく入れた樹脂がひび割れの中で殆ど下方向に流下してしまいます。注入した樹脂はひび割れの中で留まっていなければその目的は達せられません。

この現象は樹脂の硬さとひび割れ幅との適合性があるということなのですが、残念な事にこのような簡単な事も殆どの施工業者には教えられていません。樹脂が勢い良く入る場合となかなか入っていかない場合との違いはその適合性が違うのだと言う事なのですがそんな事を教える教科書のようなものが無いせいかもしれません。

珠にしか工事をしないから硬さの違う樹脂を用意できないので経験できないと言う事も有るかもしれません。


何故こんなに技術、器具が遅れているのかというとその一番の理由は一昔まではコンクリートにひび割れがあつたからといって補修の必要を考えなかった事、コンクリートにひび割れは不可欠なものとして殆ど問題とはならなかったせいもあります。


つまりひび割れ補修では商売にならなかったという事です。
左官工事は左官屋さん、大工仕事は大工さん、防水工事は防水屋さんとそれぞれの業種には専門の方達が仕事をしますが、この注入工事はそうではなくてある時は防水屋さん時には塗装屋さんまたは左官屋さんと殆どの場合には専業の人が工事をしていません。
何故こうなったのでしょうか。

原因は多くのものがありますが一番の原因を推察すると施工した結果が解らない(注入した樹脂などはひび割れの中)ので誰がやっても同じだと勘違いしている。
塗装などは素人がやるとその結果は誰が見ても解るのですぐにクレームになりプロでなければとなりますが、注入工事は施工前とその後は殆ど汚れているぐらいで中は見えないわけですから素人工事でも安い方がいいとなります。

役所の建物の場合に珠にありますが施工は国家資格の技能士が行う事などと指定する場合がありますがそれも何処ででもあるわけではなく極く限られた役所だけです。
注入仕事を暇なときに珠にやるとなると使用する材料も豊富ではなく場合によっては古い材料を使用するかもしれません。何よりも経験が少ない訳ですから注入は将来の重大事故防止の仕事なのだという意識すらないのかも知れません。

こんな施工をする人は一体注入工事は何のために行うのかということが解っているのでしょうか。
構造の強度に関係しないひび割れと、柱,梁などの構造に拘わるひび割れとでは区別しているのでしょうか、もし専門ではなく珠にしかした事が無い異業種の人の場合重大事故に拘わるひび割れもそうでないひび割れも一緒にしていい加減な施工だったらどうするのでしょう。

欠陥マンションのデベロッパーのように地震で壊れたら欠陥隠しができるよと同じになりませんか。
たしかにひび割れ程度では極端に建物が弱くはなりませんが、耐震構造の設定はコンクリートが規定通りの強度を持っているという事を前提としています。

コンクリートが途中で離れていてその部分は内部の鉄筋だけの強度でという事は想定していません。
構造計算の中に貫通したひび割れを許容範囲に入れていませんのでひび割れがあった場合の強度は殆ど解らない筈です。

やはり不安に思うことは手を尽くして解消するのが安全だと考えるべきだと思います。
この工法の具体的な問題点は次回に報告します。


もう一つの補修方法はすり込み工法です
この方法は貫通していない微細なひび割れに採用する方法です。

ひび割れに沿ってエポキシ系パテを塗りつける方法です。目的はひび割れを隠すだけのものです。
建物の補強とかには殆ど関係ありませんが、時々貫通しているひび割れにも使用している現場を見かけますが残念です。

費用は塗るだけですから一番安価です。
改修工事も民間のマンションの場合は安くした方が取りやすくなりますが、安い事がいい事ではないですよと言いたいですね。

会社は儲けるために仕事をする訳ですから安く受注したら安い工事をするでしょう。当たり前のことですね。珠に例外はありますが安い見積りの所に発注したのに高いところと同じレベルの仕事を期待するのは間違いです。

では今回はここまで。