今日はひび割れの中に注入する具体的な方法と問題点について報告しましょう
微細なひび割れの中に樹脂を注入する目的は、ひび割れの中には空気、湿気などは入らないようにする事
とそしてひび割れたコンクリートを接着させて再びその強度を元通りにする事です
樹脂をひび割れの中に充填したら再び同じところからひび割れるような事が無いように引張の接着力がコ
ンクリートよりも強いものを注入します。
一般にコンクリート自体の引張り強度は4~5N/㎜2ですが注入する樹脂はこの数字よりも強いものでな
ければ補強(元通りの強度)とはなりません
現在市場で使用されているエポキシ樹脂は殆どのものがこの引張り強度より遥かに強いものとなっていま
す
つまり例えば人体の腕の骨が折れて治療して治すとそこの部分は筋肉が余分について前よりも強くなると
言いますが、コンクリートのひび割れにエポキシ樹脂を注入して硬化するとこの現象と同じような事にな
ります。
但し、当然のことですがひび割れの中に確実に樹脂が注入された場合のことです。
微細なひび割れの中に樹脂を注入するには前回説明したように小さな力で少しずつ押し入れるという低圧
注入工法で行いますが、この工法は簡単なようで実際は色々と複雑なものなのです。
まずひび割れの幅は表面と内部では違うということ
更にはひび割れの中にはジャンカ(巣穴)があったり、または表面だけ割れていて裏側までは貫通してい
ないとか、更にはひび割れの中に石灰成分が水に溶かされて結晶化し詰まって入る場合とか・・
また、床面によく見られる現象すが清掃時にひび割れの中に水と共にゴミを詰まらせていた場合など
ひび割れは決して一様ではないという事です
そしてもっと複雑になるのはひび割れの幅と注入する樹脂の硬さに適合性があるということです
ひび割れ幅の小さい微細なひび割れの箇所に中粘度型(マヨネーズ状態)の硬さのものを注入しようとして
も適合性が合わない為に樹脂は決して入りません。
ひび割れ幅が大きい、例えば1㎜程度の隙間だとして、そこに今度は超低粘度(牛乳程度の硬さ)を注入
すると今度はせっかく充填しても暫くすると下の方に流れ出してしまいます
下の方に流れ出しても容器のように完全密封状態なら満杯まで入れていけば完全充填はできるのですが建
物の場合は隙間だらけで例えば壁の場合は裏側は貼り物があったり土の中だったり殆ど密封状態にすると
いうことはできません
注入した樹脂がひび割れの中で留まっていると言う事が大切なのですがそこにはひび割れ幅と樹脂の硬さ
との適合性を知らなければいけません
このようなガイドブックのような統一されたものが業界には無いために殆どの作業員さんは知らないまま
適合しない樹脂を平気で施工している状態です
そんな馬鹿なと思うかもしれませんがそれが現実の姿なのです
意識のある勉強している作業員の場合なら現場には必ず2種類以上の硬さの樹脂をもって行くのですが殆
どの作業員の人は1種類のものしか持って行きません
硬さの種類があるのさえ知らない職人さんもいっぱいいるのですから
こんなことが長年通用していると言うのは注入した後の状態が見えないからそしてその結果は数年後ぐら
いしかわからないからだと思います。
つまり長年経験した専門家が真面目に手間をかけて施工しても、一年に一度程度しか注入しない殆ど素人
に近い人の施工も取り敢えずは注入完了となります
では施工の途中で樹脂が入っているのかどうかの経過を監督の立場の人が見ていれば良いのでは無いかと
思いますがそこにも問題があります
発注した現場の監督もそれ以上に低圧注入工法を知らないものだから疑問さえ起こらないのです
ただなんとなく器具を取り付けて樹脂を入れる作業をしていればこの仕事はそうなんだと納得しているよ
うです
注入しているのに器具の廻りから樹脂がどんどん漏れていてもなんの疑いも持たないのには呆れますが
表面に漏れると言う事は圧力を掛けているのですから樹脂は当然抵抗の無いほうに逃げていきますから
肝心のひび割れの奥のほうには侵入はしていきません
これで良いわけはないですよね
低圧注入の現場が全てこうではありませんがその大半が似たり寄ったりの事なのです
信じられないい・・・・・でしょう
中には勉強して優秀な職人さんもいるにはいるのですがまだまだほんの僅かの人達です
低圧注入だけを生業としている職人さんは国内でも数人だと思います