低圧注入工法の問題点を工事現場から報告したいと思います 全国に数少ない低圧注入工事を生業とする専門店への啓蒙も微力ですが広く行いたいと考えています

フロッグの行く先

コンクリートのひび割れ補修の専門です

問題山積のひび割れ注入工事3

 ①擦り込み工法

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②Uカット工法

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③低圧注入工法

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このタイトルはブログを始める最初のテーマでしたがそれから既に15年も経ちます

ではその時から今までではひび割れ補修工事の低圧注入工法は何か変化してきたのでしょうか

残念ながら何にも変わらないし低圧注入工事を生業とする工事会社も殆ど増えていません。

特にここ数年はこのひび割れ補修工事もかなり減少しているようです

コンクリートにひび割れがなくなった訳でもないのにどうしたのでしょう

 景気が良くないのかも知れません

 

ひび割れぐらいでは構造物は直ちに危険ではないし予算が無いなら何かを擦り込んでひび割れが見えないようにすればお施主さんも気づかないよ・・・・とか

 

一般的にひび割れ補修には大まかに3通りの方法がありますが、その方法によっての補修の効果は大きく違ってきます

 

①ひび割れの上に可撓性エポキシ樹脂のパテを擦り込んでひび割れを消してしまいその上から塗装をして補修

 

②ひび割れの上にカッターを入れて溝を造りいわゆるUカット工法で溝に可撓性エポキシを埋めてその上に塗装をしてひび割れを消してしまう

 

③最後はひび割れた個所に低圧注入器具を取り付けてひび割れの中に柔らかいエポキシ樹脂を注入してひび割れの中に充填して密封する

 

①の方法は簡単で安価ですが単にひび割れの表面を塞いだだけですから強度とか耐久性はありません

ひび割れが貫通していればひび割れの中に入った湿気は常に暖かい方へ逃げようとしますから一年もしないうちに擦り込んだ樹脂を押し上げてひび割れが現れてきます

新しいマンションの隣との隔壁にひび割れが入ると表面のクロスが膨れてくるのはひび割れた内部にコンクリートの中の水分が水蒸気となり溜まって暖かい部屋の方に押し出ようとするからクロスが膨れるのです

お金があるならこんな応急処理のような事はしない方がいいですね

しかも数年経つと必ず処理した後に黒い染みがひび割れに沿って現れますよ

これをブリード現象と言います

 

②は擦り込む方法を大きくしたようなものでUカット工法と言いますがこの方法もひび割れた個所の強度保持とは殆ど関係ありません

この工法の長所は安価であるという事と誰でもできる工法という事です

短所は経日変化で溝を切ったところが黒く変色します

数年前にこの黑くならないようにシーリング材にブリードしないノンブリードタイプが出来ましたが経験からすれば殆ど黒く変色します

Uカツトしてシーリング材を埋めた後に更に樹脂モルタルで表面に被せてそして塗装するとかなり長い間汚染しない場合がありますが経験からすれば良く見ると塗装の引けムラなのか汚染が解ります

この工法はコンクリートの強度を戻すとかの力は全くありませんが、ひび割れから雨水などの侵入は防げるので鉄筋の錆とか中性化には効果があると思います

 

③は高価で施工は最短でも2日間以上はかかります、低圧注入工法と言います

長所はひび割れる前の強度に戻すことができます

躯体を殆ど傷を付けません

施工前と施工後は殆ど変わりません

土木のトンネルとか橋梁そして建物の梁とか柱の強度を必要とする部位にはこの工法が採用されています

大事な事はコンクリートにひび割れが発生するという事は単にコンクリートが割れているという事だけではなく内部の鉄筋とコンクリートにずれが発生していて鉄筋の周りにも隙間が出来ているという事です

低圧注入工法はこの隙間にも確実に樹脂を注入できる方法なのです

 

さて、低圧注入工法の何が問題山積なのかを説明しましょう

ひび割れ補修の例えば①②については施工の方法とかその効果などについては適材適所であれば何の問題もありません

施工上に例えばシーリング材とか可撓性エポキシパテにプライマーを塗布しないなどがあったとしてもそれは施工のレベルの問題なのでその工法が基本的に間違っているという事はないと思います

 

③の低圧注入工法についてが色々と問題があるのです

例えば鉄道、道路の橋梁の桁とか柱にひび割れがあった場合は発注する方はひび割れの中にエポキシ樹脂を確実に注入をしてひび割れの中を樹脂で満杯にしてひび割れる前の強度に戻して欲しいという事とひび割れから雨水が侵入して内部の鉄筋を腐食させてコンクリートの中性化を防いでほしいという事だと思います

しかし折角注入してもその結果が見えないのですから例えばひび割れの中に樹脂が入っていなくて施工後にもひび割れから雨水が入り込んでいればこのような場所は殆ど目視は出来ない個所なのでかなりの期間はそのまま放置となります

こんなことはかなりある筈なのです

 

問題なのはこのひび割れ補修工事はその施工の結果について樹脂が入っているか否かの検査が殆どできないのです

検査方法が無いのです

 

唯一の方法はそその部分をくり抜くコア抜きと言う方法があるのですがこのような大切な個所に大きな穴を空けることはできません

空けることによって更にひび割れが発生するし鉄筋でも切ったりすると大変な事になります

 

残念ながら結果の検査方法が無いのです

数年前に笹子トンネルの天井版が崩落して大変な事故になりましたがこの時の原因であった後付けアンカーボルトの取り付けも取り付けに使用したエポキシ樹脂とかポリエステル樹脂の接着剤が確実にボルトの周りに回ったか否かは確認ができない工法なのです

崩落の原因はこの接着剤の劣化とそもそも樹脂が廻っていない個所があったという報告もありました。

およそ土木建築工事の中で施工の結果が見られないという工事はこの後付けアンカーボルトとこのひび割れ補修の低圧注入工法しかないと思います

 

施工後の検査もできない、更には構造物にとっては非常に重要な所の補修工事であることを考えると今の低圧注入工法で大丈夫なのかと思います

 

問題1  専門職人さんが殆どいない

低圧注入工法で確実にひび割れの中に樹脂を注入するには色々な基本的な決まりがあるのですが、そもそもこんなに大切な工事なのに低圧注入工事を生業としている専門職人さんたちが施工をしていないという事に問題があるのです

専門ではないのですから低圧注入の経験も少なく知識もあまりないのが普通です

例えば注入する樹脂には色々な硬さの超低粘度型、低粘度型、中粘度型、高粘度型の製品がありますがこれはコンクリートにひび割れた幅とこの色々な硬さの樹脂には必ず適合性があるのです。

微細な小さなひび割れには超低粘度型とか大きな例えば0,7㎜幅以上は中粘度か高粘度型とかのひび割れの中で流下しないなどひび割れ幅に適合した樹脂があるのです

例えば電車に乗る時に人が一斉に入口に殺到して入ろうとしてもなかなかスムーズには入れません

一人一人が順番に入れば簡単に入れます

ひび割れに注入する時もひび割れ幅は小さいのに硬い樹脂を入れようとすると樹脂は入り口で詰まって決して入りません

ひび割れの幅に合った柔らかい樹脂から注入すれば入ります

そしてひび割れ幅は例え同じ個所でも入口は例えば0.5㎜幅としても内部は0,1㎜しかない場合もあります。

ひび割れ幅は一定ではないのです

この様な場合は最初は0,1㎜幅に合った超低粘度型のエポキシ樹脂を注入して注ぎ足しは0.5㎜幅に合った低粘度型か中粘度型のエポキシ樹脂を注入するのが正しいのです

 

では現場には常に数種類の硬さのエポキシ樹脂が必要となるので必ず持って行っているのかと言えば、兼業で施工している方は生業として毎日注入工事をしているわけではありませんからそんな余分な樹脂は在庫もしていないし余分に買って持っていくにはそんな費用は貰えないという事でいつも同じ低粘度型の樹脂だけとなっています

折角注入出来たとしても適合しない柔らかい樹脂ならひび割れの中で樹脂は流下して下の方に流れ出してしまいます

注入して接着させることが目的なのですからひび割れの中で留まってくれないとだめです

下の方に樹脂が流れてしまっては強度は期待できません

次回にも報告しますがこの工法の国家資格の技能検定制度もあるのですがこれにも色々と問題があります

 

2 注入器具の性能の規格が無い

つまり低圧注入器具は次の要求性能が必要です

☆色々な硬さの樹脂の注ぎ足しが出来る事(器具を取り外して漏れ出すようなものは注ぎ

   足しができる器具とは言わない)

☆押し圧は0.1~4Mpaが必要です 輪ゴム程度では駄目ですね

☆台座は透明でひび割れに取り付けた時に確実に吐出口が合っているか目視で確認が 

 必要

☆容量の表示が必要

 などなど

 

国内で一番普及している器具は注射器のようなもので簡単には注ぎ足しが出来ない構造で硬い樹脂は注入は出来ないのです

天井面とかひび割れの中に大きな巣穴があった時もしくはひび割れ幅が1㎜となったらなにを注入しているのでしょうか

 我々専門から見れば色々とできない部分がある器具で兼業の職人さんたちはどのようにして解決しているのでしょうか

検査が無いという事もあって写真撮影と出荷証明だけでなんとかしのいでいるのでしうか

兼業の方でも工法を良く理解していて注入が確実にできれば問題は無いのですがこのような器具メーカーは不都合な事は言いませんからいい仕事をやるのなら自分たちで勉強するしかないのです

注射器のメーカーに注ぎ足しの事を質問したことがあったのですがその答えは

当社は樹脂の注ぎ足しは認めていませんとの事でした

何故と質問すると 色々な硬さのエポキシ樹脂を混合されてもその混合物の試験を受けていないので責任は持てませんとの事でした。

いえいえ注ぎ足すという事は混合するのではなく後ろから押し入れるという事ですよ

それに規定通りに混合したものをそれぞれに混ぜ合わせても正常に硬化するし公的な試験はしていなくても常識的には元々の強度とさほど変わりませんでしたよ(私が在籍していたメーカーではやりました)

 

今日はこれまでです   

今回のコロナ騒ぎでマンションとか住宅の基礎のひび割れ注入は延び延びになっています。

暇になっていますのでまたブログはまた更新します

 

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お互い我慢の時ですね