コンクリートのひび割れ注入工事に使用されている低圧注入器具で樹脂を入れることで低圧の圧力を得るシステムの器具
医療用の注射器の原理と同じでピストンを輪ゴムで押して低圧の力を得るシステムの低圧注入器具
樹脂を器具に入れると器具の中には圧搾空気が発生して樹脂を押し入れるシステムのフロッグとプラグAの基本的な構造です
今回はコンクリートのひび割れ補修における低圧注入工法に使用されている低圧注入器具について報告します
申し訳ないのですが写真の製品以外にも低圧注入器具と言われるものは各社で販売されいますが今回は比較的昔から市場にあるものを選んで報告しています
誤解のないようにお願いしますが決して他社製品の中傷ではありません
現場で使用してその経験からの個人的な報告なのでご理解をお願いします
この低圧注入器具については国内には低圧注入協議会と言う団体がありますが低圧注入器具及びエポキシ樹脂等を生産している会社が全て参加しているわけではありません
かなり昔になりますが30年ほど前に当時の建設省と建設会社それに低圧注入器具のメーカーで低圧注入工法の性能認定の為に官民共同研究をしています
その時にこの協議会が設立されています
現在の国交省はこの低圧注入器具のメーカー指定はしていないのですがこの当時官民共同研究に参加した協議会は既得権益なのかどうかは解りませんが新規の参入には消極的なようで当時の会員から増えているという話はききません
低圧注入器具は写真のように色々な形そしてシステムがありますが基本的な事は国交省で決めているひび割れの中に押し入れる力は0.4N/mm2以内となっています
この数字が出るような器具であれば低圧注入器具と言えるという事ですが私はこれでは完全なひび割れ補修は出来ないのではと思っています
例えば原子力発電所の建物などとかダムとか堰堤などのようにコンクリートの厚さが2000㎜ぐらいの厚さのものもあります。
これほどの幅のひび割れの中に樹脂を押し入れるにはその押し圧では足りません
またひび割れ幅が大きい例えば1㎜以上の隙間に樹脂を注入するには柔らかい樹脂では折角の注入も時間と共に樹脂は流下して下の方に流れ出してしまいます
コンクリートの強度をひび割れる前の強度に戻すという目的ならばその隙間には樹脂が留まって確実に接着していなければいけません
ならば中粘度もしくは高粘度の樹脂もひび割れの中に押し入れるだけの力が必要なのです
更にはひび割れから地下水などの圧力があるひび割れについては水中硬化型の樹脂を地下水の圧力以上の力で押し入れなければいけません
長年の経験からしても強い押し圧も絶対に必要なのです
経験から分かる事と言うのは机上では考えもしなかったことが正解と言うのが多くあります
例えば低圧注入器具の機能の中に樹脂の注ぎ足しが行える事は私は不可欠だと思っています
この樹脂の注ぎ足しは例えばひび割れの中に巣穴(ジャンカカ等)があるのでその注入する樹脂量が足りないというだけではありません
経験から分かった事ですがどんな幅のひび割れであっても最初に超低粘度型の非常に柔らかい樹脂を少しでも入れるとひび割れの入り口が滑りやすくなるのかその後の注ぎ足しも面白いようにひび割れの中に侵入していきます。
ですから注ぎ足すという事の目的は最初に超低粘度型の樹脂を入れて樹脂が入りやすくするという事とひび割れ幅に合った硬さの樹脂を注ぎ足すという事の二つがあるという
事を知って欲しいと思います
写真の製品について説明します
一番上の写真の4コは器具の中に樹脂を入れると押し圧が発生するシステムの製品ですが、そのうちの上にあるプラスチック製の製品は発生する圧搾空気で樹脂を押し出します
樹脂を多く入れる程その圧力は大きくなります
最大2Mpaぐらいは簡単に発生できます
下のゴム製の丸いものは樹脂を入れるとゴム風船のように半円形に膨れてきます
この膨れたゴム風船が戻る力を利用して樹脂を押し入れます
この右側の製品は樹脂を入れ過ぎると破裂してしまいますが天井面などは気を付けなければいけません
このグループの器具は樹脂の注ぎ足しは出来る機能の製品となっていますが丸い二つは中粘度型と高粘度型の樹脂はお勧めとはなっていません
上のプラスチックのフロッグとかプラグAの二つは硬い樹脂でも注入が出ます
特にフロッグは最初から硬い樹脂も注入するように設計して造っています
下の写真の注射器タイプについて
このタイプの製品はひび割れの上に取り付けてからポンプなどで樹脂を注入するというシステムではなく最初に注射器の中に樹脂を吸引してから予めひび割れの上に取り付けた台座にネジ式の方法で取り付けます
そして輪ゴムで引張り樹脂を押し入れます
輪ゴムの力はピストンとシリンダーの摩擦力と樹脂を押す力との両方を必要としますからこの程度の力では中粘度型とか高粘度型の樹脂の注入は出来ません
更にはシリンダ本体の直径(30㎜)と吐出口の直径(5㎜)の大きさに差がある為にここにも樹脂に大きな力を必要としています
上のグループの器具はその押し圧は直接樹脂にかかりますがこの注射器タイプはゴムの収縮力をピストンに伝えてから樹脂に力が伝わります
樹脂の注ぎ足しも機能としては無いのですが一旦器具を取り外して付け直すことで注ぎ足しは出来るとなっています
でも一旦台座から取り外すと圧力が掛ったままの樹脂は外した途端にひび割れからは戻って漏れ出すのですがメーカーはその程度の漏れ、汚れは良いとしているようです
天井面では溢れて落ちる樹脂に気を付けないと目の中に入るよ
しかし普通には注ぎ足している職人さんをあまり見たことはないです
むしろ注ぎ足すのではなく台座だけを取り付けてこの器具を着け回している職人さんは見たことがあります
低圧注入は常識的には注入した翌日に樹脂が硬化したのを確認して取り外すのですがこの場合は器具を台座に取り付けてから10~20分ほどしたら取り外して次の台座に付け替えるのです
これなら樹脂が入ろうが入るまいが関係なくどんどん付け回していれば器具の費用は節約できるものね
このやり方は流石に駄目でしょうね
ひび割れの数量の100Mを契約をしたら低圧注入器具は少なくとも400コは使わないとね
着け回しのやり方なら10~20コで充分だものね
この注射器タイプは国内では2社ありますが右側の器具はA社ですが日本では珍しい全くの類似したいわゆる物まねのデザインとなっています
不正競争防止違反にならないかと心配しますが、違ったのは台座の吐出口に金属の玉の逆止弁を取り付けて差別化をしたとか
注ぎ足すときに器具を外したら樹脂が漏れてくるので漏れないように吐出口にタマとスプリングを取り付けたと発売されました
K社のものとは違うと言っていたのですが台座の吐出口にタマを取り付けたものだから
吐出口をひび割れの上に取り付けるときにタマがある為にひび割れが見えないので施工できないというクレームで今はK社と同じように逆止弁はありません
机上の設計ではこうなるという典型的な見本のようですね
今日はこれまで
コロナウイルスに気を付けて下さい、あんたもね・・ってかぁ
それで何が問題なのですか?
そうでした結論がありませんでした
これだけある低圧注入器具に全くの統一した規格が何にもないという事に問題があると思っているのです
使う側からすれば各メーカーがひび割れに最適な自動式低圧樹脂注入器具と謳ってあるのだからどれもひび割れの注入には最適なのだろうと思うだろうしそれは多少の価格の違い程度だと思うのです
ましてや生業としている専門業者ではなく兼業の人達が多いのですから
10年ぐらい前に工業規格院に低圧注入器具のJIS規格を作って欲しいという申請をしたのですが結果は国交省が必要は無いとの意見だとの報告でした
その理由はひび割れ注入は結果が大切で樹脂などはJISA6024を制定しているがそれを使う道具についてはその必要は無いとの事でした
つまり大工さんが使うのこぎりとかカンナの規格を作れと言うようなものでそれは必要かないとの事でした
つまり使用する職人さんが良い仕事をするにはどれがいいのかを選別すべきとの事でした
他の業種で結果が見えないから誰がやっても良いというのは他にないものね・残念 !