首都圏では人気の東急沿線の港北区の住宅です
擁壁に縦にひび割れが発生しています
ひび割れの発生は最近のようで、エフロ、錆汁等は流れ出してはいません
長年にわたって色々な構造物のひび割れを観察しているとその新しさ、古さ、その発生の原因などかある
程度は解るようになります。
特に強い地震によって発生したひび割れはその割れ方に特徴があって殆ど解ります
地震によって発生したひび割れはひび割れの表面に小さな欠けが無数にあります
このような現象は、おそらくひび割れてからも隙間にズレを起こすのではないかと推察できます
今回の住宅の擁壁のひび割れはそのような症状はありません
擁壁の曲り部分の縦方向に発生しているところから推察するとコーナー部分にそれぞれの方向から引っ張
られるような力が掛かったのだと推察します
建物の荷重なのかも知れませんが
ひび割れ幅が比較的大きいために超低粘度型の樹脂を注入した後に中粘度型の樹脂を数回注ぎ足し注入
をします。
外気温度は5℃の場合はエポキシ樹脂の粘度は通常よりも一段階硬い状態になります
ひび割れ幅が0.7㎜の場合は通常の気温ならば高粘度型の樹脂を仕上げに押し入れるのですが、こんなに
外気温度が低い場合は中粘度型の樹脂が適合の樹脂となります。
翌日に撤去して樹脂の納まりを観察すると、案の定高粘度型と同じようにひび割れの表面まで樹脂は上
がってきています。
話は変わりますが、土木ではセメントスラリー(無機系注入材)を注入するらしいのですが、ひび割れの幅
と注入材の硬さとは適合性があるのを知らないのでしょうか。
いわゆるセメントスラリーとはセメントを超微粒子にして水系の接着剤と混ぜて注入材としたものなので
すが、その材料の硬さ別の種類なんてありません。
ではひび割れ幅が1㎜以上もあつたらどうするのでしょう・・・
柔らかいセメントスラリーはひび割れの中に流れ込んで行きますがその後はどうなると考えているので
しょうか。
ひび割れはビンのように底があるわけではありません
流し込めば下の隙間から全部流れ出してしまうでしょうし、壁面なら反対側に流れ出してしまう筈です
ひび割れの注入は接着剤をひび割れの中に留まるようにして接着させる工法なのに柔らかい樹脂を流し込
んで時間とともに空洞になってしまうとは考えないのでしょうか。
セメントスラリーも色々な硬さのものが必要とは考えないのでしょうか
注入した結果が解らないからと言っていい加減な製品を造って適当に販売して・・それでいいのですか
セメントスラリーは水系ですからひび割れの中に注入すると直ちにひび割れの中のコンクリートに水分を
吸収されていわゆるドライアウト現象になってひび割れの奥には入らない・・というのは常識なはずなの
に・・・いまだに注入用として販売しているのは・・なんで?
フロッグでセメントスラリーを注入すると摩訶不思議なことが起こります
低圧注入工法は小さな力で時間をかけて樹脂をひび割れの中に押し入れる方法なのですが、セメントスラ
リーの場合は時間が掛かるとフロッグの中でセメントと樹脂が分離してしまうのです
セメントが沈殿してしまうのです
樹脂とセメントでは比重が違うから至極当然の事なのですが
ひび割れの注入業界とはこの程度なのです・・・・・・。