低圧注入工法の問題点を工事現場から報告したいと思います 全国に数少ない低圧注入工事を生業とする専門店への啓蒙も微力ですが広く行いたいと考えています

フロッグの行く先

コンクリートのひび割れ補修の専門です

これでいいの?各社の低圧注入器具

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今回と次回は他社の低圧樹脂注入器具の機能と特徴等をフロッグと比較しながら報告をしたいと思います

決して他社の製品を批評して中傷しようというものではありません

施工する職人の立場から経験して色々とある問題点の報告です


ひび割れ補修における低圧注入工法のその目的は、ひび割れたコンクリートの隙間に樹脂を確実に注入し

て隙間なく充填することにあります

充填することによってこのひび割れた箇所をより強く固定し、更には鉄筋の錆によるコンクリートの中性

化等を防ぐというものです


目的は簡単なのですが、その効果とか必要性等には色々と考え方の違いがあって必ずしもひび割れの補修

は全てが低圧注入工法で処理するとは限りません。

例えば首都圏のマンシヨンの大規模改修工事などでは殆どの現場では、ひび割れは建物の強度とは関係が

無いとして樹脂モルタル等でひび割れを塗り潰すような方法が採用されたりしています。

また、過去の経験から樹脂が入るかどうかが判らないような低圧工法ではなく、ひび割れを削って溝を造

りその部分にシーリングするUカツト工法で施工したりしています

マンションの場合には施工の方法等について決定するのは入居している方達で決めた管理組合で行います

が、この管理組合の人たちは建築には素人の方が多くて具体的な補修の方法は入札等で決定した施工業者

の方法に委ねるという事になります。


首都圏のマンションの改修業者は殆どがいわゆるゼネコンではなく防水業者とか塗装業者が専門の改修

業者となっているようです


もともとそのマンションを造ったゼネコンならばそれなりに技術も広く持っておりひび割れの補修につい

ても公的な建物の改修を経験していれば低圧注入工法なども知っていると思いますが、特定の施工業者

では個々の職種の技術は有っても専門外のひび割れ補修について殆ど知識も経験も無いと思います


知らないことは見積もりをしないという事でひび割れ補修は簡単な塗りつぶしとかUカツト工法となりま




さて、その低圧注入工法の注入器具について写真の製品についてその問題点などを報告します

ひび割れの中に接着剤を注入して確実にその隙間に樹脂を充填するにはその基本となるものがあります

まず、ひび割れの幅と注入する樹脂の硬さには適合性があります

0.3㎜幅以下のひび割れなら樹脂の硬さは超低粘度型がベストです

0.4~0.6㎜程度なら低粘度型の樹脂が適合しています

0.6㎜~1㎜幅ならば中粘度型の樹脂が良くそれ以上の幅ならば高粘度型の樹脂が適合です

ではひび割れの表面は0.3㎜幅なのに裏側では1㎜幅にも広がっていたらどうしますか

このようにひび割れは決して一定の幅ではないとの認識を持つ必要があります


ひび割れの中に確実に樹脂を注入するには微細なひび割れのために最初は超低粘度型の樹脂を注入して

次の注ぎ足しは低粘度型を注入をする更には中粘度型を注ぎ足しを行う・・・と言うように必ず何種類か

の樹脂を注ぎ足す必要があります。


最初に超低粘度型の樹脂を注入した時に器具の中の樹脂が直ちに無くなる場合はそれはひび割れに対して

柔らかすぎるという事となり更に今度は低粘度型の硬い樹脂を追加注入します。

それでも樹脂が抵抗なく器具の中の樹脂が直ちに無くなる場合は更に硬い中粘度型の樹脂を注入します

このように違う硬さの樹脂を注ぎ足すという注入の方法が確実な注入方法というのが基本という事を知っ

て欲しいのです。


ひび割れの幅と樹脂の硬さには適合性があるという事です


微細なひび割れには超低粘度型の柔らかい樹脂を、ひび割れ幅が大きいところには硬い樹脂でなければ、

いけません

この二つの器具はひび割れの幅によって樹脂を簡単に変えて注ぎ足すということは殆どできません

更にはこの器具は中粘度以上の硬い樹脂は押し出しができません

つまりひび割れ幅が大きいものについては確実には注入ができないという事です。

たまたま、注入した樹脂とひび割れの幅が適合していれば入るよ・・という程度です。


しかし残念ながらこのタイプの器具は広く使用されているのです

何故だと思いますが、それは低圧注入を生業としているいわゆる専門職人が存在しないからそして注入た

結果が見えないから器具を取り付けて樹脂が入ろうが入るまいが・・とにかく完了となっているのです

信じがたいでしょうがそれが現実なのです



写真の右は最近に(2年前に上市)販売されている製品ですが、左のメーカーのものと全く同じの構造を

しています

国内の大手の企業なのですがこんなに露骨に類似商品を造って販売する会社は日本の企業では珍しいです



この会社の物づくりの姿勢が良く解りますね・・・売れれば何んでもありでしょうか。

左の製品は特に首都圏では占有率が高い製品です

前にも報告していますが、非常に簡単で解りやすいという事で色々な職種の職人さんに採用されているよ

うです

樹脂を押す低圧の力は、輪ゴムをシリンダーとピストンに引っ掛けて輪ゴムの戻る力を利用しています。

樹脂を注射器のように吸い上げて、予めひび割れに取り付けていた台座に器具を取り付けて輪ゴムを取り

付けます。

輪ゴムの戻る力で樹脂が押されてひび割れの中に入ります。

注入する時のポンプは要らないし簡単に施工できます。

熟練を要するものは要らないように見えます。

しかし、この器具の問題点は樹脂の注ぎ足しが簡単にはできないことです

もともとこの器具は樹脂を注ぎ足す事は考えていない構造ですが、でも、できない事はありません。

シリンダー内が空になったら輪ゴムを外して台座から外します

外したら容器から樹脂を吸い上げて再び台座に取り付けて輪ゴムを取り付けます。

簡単ですが殆どの職人は注ぎ足しは行いません。

何故、注ぎ足し施工をしないのでしょう?

器具を取り外したら、せっかく入れた樹脂が戻ってきて台座から溢れてくるのです

圧力を掛けて入れるのですから圧力を抜けば樹脂は漏れてきます

周りは樹脂で汚れますし下に人がいれば大変です。

天井なんかは絶対に無理です・・でもこのメーカーの説明では注ぎ足しは出来るというのです


右側のメーカーはこの事に付いては類似商品ではないといいます。

同社の器具は台座に逆止弁を取り付けているので取り外しても樹脂は漏れないそうです。

なるほど・・。

でも実際にこの器具を使うとしても台座が透明ではないし肝心の吐出口はその逆止弁があるためにどうし

てひび割れの上に取り付けるのですか・・・・。


後日この欠点が解ったらしくせっかくの特許も諦めてこの逆止弁は取り外したらしい・・・・


このタイプの器具はシリンダーの大きさと吐出口の大きさが大きく違う為に硬い樹脂は圧力不足で注入は

できません。

丁度、医療用の注射器で粘度のあるものを押し出そうとしてもピストンが動かないと同じ原理です

そもそもこれらのメーカーは0.6㎜以上のひび割れ幅には対応しないという事かも知れませんが・・・


最近、このタイプの製品の施工現場で非常に気になる事があります。

いわゆるこのような器具を使い回しをする職人さんが増えてきているという事です。


例えば施工するひび割れが100Mあったとするとフロッグ等の場合は400個は必要で取り付けますが、この

製品の場合は台座は400個取り付けますが、器具は最初に20個を取り付けたらある程度の時間が経ったら

最初の方から取り外して、樹脂を入れて再び新しい箇所へ取り付けていくのです。

これを繰り返していけば400個が必要の所でも20個で済みます。

器具はフロッグよりも安くなります。

なっ、なるほどね。

良く考えましたね、驚きますが、でも、それではひび割れの奥の方までは入いらないでしょう。

それに周りは樹脂で汚れますがそれで良いのですか?

この方法で毎回、通っているのだから・・・どうせ確認はできないのだから

それに汚れはひび割れの中が満杯なので溢れていると言えば施主も、監督も安心するだろう

逆に廻りが汚れていないと、本当に注入したのかと心配されるだろうがぁ・・。

ち、ちょっと違うと思います・・。


結果が見えない、現場監督も知識不足、検証もできない・・そんな工法なので今は仕方ないのかな。



今日はこれまで・・。