低圧注入工法の問題点を工事現場から報告したいと思います 全国に数少ない低圧注入工事を生業とする専門店への啓蒙も微力ですが広く行いたいと考えています

フロッグの行く先

コンクリートのひび割れ補修の専門です

これでいいの?低圧樹脂注入器具2

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写真の左側はスクイズ工法と言います。

下の臍部分(テニスボール等の注入口と構造は同じ)からポンプで樹脂(接着剤)を注入します。

注入された樹脂は丁度ゴム風船に水を入れた時のよう樹脂を入れると周りのゴムが膨れてきます。

その時のゴムの戻る力を利用して樹脂を低圧の力で押していきます。

但し樹脂を入れすぎるとゴムは限界になって破裂します。

樹脂の注ぎ足しは出来ます。

構造上このタイプの商品では柱等の入、出隅には使えません。

また、ゴムの戻る力なので硬い樹脂を入れる事はできません。

但し、ひび割れ幅が1㎜程度の大きさなら可能だと思います。

写真の真ん中の商品はスクイズ工法の入れすぎて破裂する事を防ぐ為にプラスチックのカバーを付けてい

ます。


更にこの器具は注入口から樹脂が漏れるという事故を防ぐ為にスプリング等を採用して洩れないように工

夫してあります。

この器具も入、出隅の注入そして硬い樹脂の注入は同様使用できません。

右端の製品は風船を細長くしたタイプで2製品と同様にゴムの戻る力を採用しています。

この商品は前回のシリンダー工法に似ていて樹脂の注ぎ足しは常識的にはできません。


注ぎ足しをするとすれば、一度台座から取り外してから注ぎ足しをします。

器具を外した時に当然ながらストッパーもありませんから入れた樹脂は漏れ出してきます。

この器具は、台座の樹脂の取り入れ口は僅か直径1㎜程度しかありません。

これでは硬い樹脂を入れようとしても注入は出来ません。



今回紹介した器具は簡単に言えばゴムで出来た袋の中に樹脂を入れて、膨れた後でそのゴムの戻る力で低

圧の力を利用して注入するというシステムです。

前回のシリンダー工法はピストンをゴムの力で押すというシステムです。

シリンダー工法の場合はピストンに強い摩擦が発生するのに比べ風船型はゴムの力を直接樹脂に伝えるの

で圧力の無駄は殆どありません。

つまり樹脂の流れはスムーズだと言う事です。


建物の微細なひび割れの中に接着剤を注入する目的は、ひび割れの中に流れ込む空気、湿気を遮断して内

部の鉄筋の酸化(腐食)を防ぐ事とその部分をコンクリートよりも強い接着剤により固定する事にありま

す。

つまりひび割れの中には必ず接着剤で満杯にしなければいけません。


ひび割れの中に接着剤が入った所もあるが空隙もある、というような事では決して目的は達せられません

一定の幅の大きさではないひび割れの中に接着剤を注入するにはどんな場合も次の事が必要です。


1,ひび割れ幅と接着剤の硬さには適合性がありますから注入は必ず柔らかい超低粘度の接着剤から注入し なければいけません。
 注ぎ足しが必要です。


2,ひび割れの中には巣穴が発生している場合があります。
 巣穴の中も樹脂で満杯にするには注ぎ足しが必要です。


3,ひび割れ幅が大きい場合は低粘度タイプの接着剤ではせっかく中に入れても流下(下に流れてしまう 
 事)してしまいます。
 ひび割れ幅が大きい所は(0.5㎜以上)中粘度及び高粘度の接着剤を仕上げに注入する事が必要です


4.ひび割れは必ずしも裏まで貫通しているとは限りません。
 器具に空気抜きの構造が必要です。
 職人さんが空気抜きの技術を持っていてもこのような器具では全く使えません

5.ひび割れは平面だけではありません。
 柱の角などの出隅、入隅にひび割れる場合もあります。
 角の部分に使用できなければ駄目です。


以上ですが前回と今回に紹介する低圧注入器具はこのような基本的な事に対応できるのでしょうか。

明らかに出来ないと解っていても、それでも疑問も無く現場では使用しているということに奇異な業界と

思うのです。

目的に達する事が出来なくても市場で使われていると言う事は、例えばブレーキが前輪しか利かない自転

車を販売しているようなものだと言うのは言い過ぎなのでしょうか。


低圧注入工法を信頼できる工法にするには、低圧注入工法を生業とする職人さんが増えなければいけませ

ん。

専門の職人さんが増えると注入には不向きな低圧注入器具は淘汰されていく筈です。



器具を取り付けて写真を撮ったらほぼ完了ではあまりにも悲しすぎませんか・・・・・。