低圧注入工法の問題点を工事現場から報告したいと思います 全国に数少ない低圧注入工事を生業とする専門店への啓蒙も微力ですが広く行いたいと考えています

フロッグの行く先

コンクリートのひび割れ補修の専門です

低圧注入工法の剥離性シールの場合

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ひび割れの補修に於ける低圧注入工事の仮止めシールの方法としては下地に傷をつけない方法とシール材

を削り取る方法があります。

建築の場合は殆ど剥離性のシールを使用していますが、土木などではエポキシ系のパテなどを使用する場

合が多いようです。

先日、低圧注入の専門業者からお電話を頂きましたが、このエポキシ系のパテを使用してゴム風船タイプ

注入器具で工事を始めたそうですが、台座から樹脂が漏れてしまうとの相談。

仮止めシール材は樹脂が漏れないようにするだけの目的のものですから、注入して樹脂が硬化したら直ち

に撤去します。

したがって今回のように硬化が遅いようなエボキシ系のパテは殆ど使いませんが、土木の場合にはこのよ

うな製品が時折指定となっています。

仮止めシール材は数日で撤去してしまいますから、接着強度とか耐候性は殆ど必要としません。

今回のように接着を目的としたパテなどは硬化が遅く施工に手間が掛かるので一般には使用しないのです

が、器具メーカーの指定となっているそうです。

現場には疎いメーカーの製品を指定されてしまうと現場では大変です。


専用のエポキシ系の仮止めシール材なら30分もあれば硬化してしまいます。


エポキシタイプのパテは今の時期は硬化が非常に遅いので、プラスチック製の器具の台座との接着が不完

全では・・・。

エホキシ樹脂は接着剤の中では最強の接着力を持っていますが接着するものによっては極端に弱いものが

あります。

コンクリート、鉄等には最強ですがプラスチックについては殆どの樹脂に接着が良くありません。

接着するとかしないとかの判断は、接着したものを引張った時に接着している界面(表面)から剥がれるの

ではなく下地を引張って破壊するかもしくは凝集破壊(接着剤そのものが切れること)する事を言います。

例えば厚紙と厚紙を糊でくっつけた時にその部分を剥がした時に厚紙が他の箇所から破れていく事が接着

良好で、貼りあわせた箇所が破れないで剥がれる事は接着はしないと判断します。


今回のご相談については次の問題点が考えられます。

エポキシ系パテの接着力が一日では発揮できていない。

気温が5度以下では製品によっては硬化が進まない場合があります。

お昼時の温度が上がる時間を多く経過するしかありません。

場合によっては3日間は養生が必要かもしれません。

つぎにこのタイプの器具は樹脂の注ぎ足しが出来ない一発勝負の器具ですからひび割れに抵抗が少ない超

低粘度型の樹脂が最初に注入ができません。

通常の低粘度型の樹脂ではプラスチック台座の部分に圧力が掛かってきますから余計に漏れやすくなって

きます。


『注入の専門業者なのにどうしてそのような注ぎ足しが出来ない器具を使っているのですか?』

『事前に元請にこの器具では施工が上手くできないと言っていたのですが、役所の指定となつているとか

で変更できなかったのです・・・樹脂は多少は入らなくてもいいからと言われて。』


『樹脂は入らなくてもいいからなんて、何の為に仕事をするのでしょうね』

土木だから大雑把でいいと言う事はないでしょう。


殆どの役所(国、県、市)では特定の注入器具の指定はありません。

特例として『特記仕様』というのがありますが、殆どの場合は指定品があったとしても同等品以上となっ

ていてどうしてもという事はありません。


税金を使うのですから最初から入らなくてもいいからというのはいけませんね。


そのような器具を造っているメーカーにもがっかりですが、元請さんのいい加減さには怒りたくなります

ね。

今までひび割れ注入を受注しても樹脂がひび割れの中に入った事がなかったのかも知れませんね。


だから低圧注入工法はいい加減な不確実な工法だと言われるのです。




写真は剥離性のシール材で使用した時の残材です。

ひび割れの中にシール材が食い込んでいるのがわかります。

シール材がひび割れの中に食い込むと言う事は、ひび割れの表面にはエポキシ樹脂は回らないと言う事

です。

注入が完全であればひび割れが消えると思っている人がいるようですが、どんな方法であってもひび割れ

が消える事はありません。

ひび割れには全て仮止めシールを行いますから、撤去した後のひび割れはそのまま残ってしまいます。

しかもこのようにシール材がひび割れの中に食い込みますから一見では注入前よりもひび割れが大きくな

ったのではと見える場合があります。

注入してもひび割れの表面は施工前と殆ど変わらない状態であると言う事を知っていて下さいませ。