低圧注入工法の問題点を工事現場から報告したいと思います 全国に数少ない低圧注入工事を生業とする専門店への啓蒙も微力ですが広く行いたいと考えています

フロッグの行く先

コンクリートのひび割れ補修の専門です

誰がこんな国家試験を作ったの

イメージ 1

イメージ 2

今年の樹脂注入技能士の試験は今月の末から2月の初旬に全国各地で行われていますが、10数年振りに事

前の講習等に関わってこの試験を見ましたが、その低レベルの試験問題に呆れています。


とてもこの仕事を生業としている関係者が関わっているとは思えません


コンクリートの構造物の大事な部分の補修と言う意識とその技術レベルが殆ど無いのではないかと思いま

す。


上記のスケッチは既に受験した方から教えてもらって、その技能の試験台(画題)の形です。


左側の縦の線はひび割れを想定しているものです。

次の縦の溝はひび割れの上に溝を造ってシーリング材等を埋め込みUカット工法を試験するものです

右側の四角い物はモルタルの浮きを想定して穿孔して樹脂を注入しろ・・という問題です


一番右の三角形のものはコンクリートの欠損を想定していて角の部分に軽量樹脂モルタルで補修しなさい

という問題です。


この4つが実技の試験なのです


確かに技能検定試験は国家資格の中でも看護士、医者のようにその内容は広範囲で高度な技術というもの

では有りませんが、そもそもこの技能検定の目的は現場施工の正しい施工技術とその技術の向上にあると

思います。


この問題とこの施工方法を正しいとの課題を作った人達はいったい普段はどのような仕事をしているのだ

ろうかと呆れてしまいます。


そこで、それぞれの課題についての問題点を一言・二言


ひび割れ注入について

低圧注入器具については特定のメーカー名は謳ってはいないのですが参考としてシリンダー工法の器具

としています。


この器具は樹脂の注ぎ足しができない、粘度の高い樹脂は注入できない、台座から液漏れを起こした場合

の対策もできない・・など

そもそも低圧注入工法はひび割れの中に接着剤を確実に充填してその部分を元通りの強度に戻してその構

造物を守ろうという目的のためにあるのです。


ひび割れの幅と樹脂の硬さ(粘度)には必ず適合性があります。

微細なひび割れには超低粘度型、低粘度型しかひび割れの中には樹脂は進入していきません

0.6㎜以上のひび割れについては低粘度型の樹脂では進入できても柔らかすぎるために時間とともに下の

ほうへ流れ出してしまいます。

このようなひび割れの場合は当然ですが中粘度型、高粘度型の樹脂を注ぎ足す事が不可欠なのです

この器具は中粘度以上の硬い樹脂は注入はできません


輪ゴムで引っ掛けたら終わりと言う仕事は、真面目な職人さんはやりません。

鉄筋コンクリートに発生するひび割れは決して一定の幅ではありません

表面は例えば0.3㎜幅であっても中は広くなっているかも知れません

いつも同じ樹脂で同じ方法では決して確実な施工はできません。



この試験では低粘度型の樹脂30gを器具に入れて輪ゴムを引っ掛けたら合格との事・・・なんじゃい・・


Uカット工法についての問題点

画題に書かれている線にそってサンダーで溝を作ってそして樹脂を充填してからいきなりその上に樹脂モ

ルタルを左官コテで仕上げるのだそうです。


驚いた事に、溝の中に樹脂を充填するのにヘラで摺り込むのだそうです。

幅10㎜の溝にチマチマとヘラで押し入れるのが正しいとか・・・・。

この問題を作った人はコーキングガンと言うものを知らないのでしょうか。

溝の中に硬い樹脂を充填するのは、先端の細いノズルで底の部分から空気を追い出しながら樹脂を入れて

いく方法が基本中の基本でそれは常識でしょう。

コーキング屋さんが知ったらそんなバカな・・・・としか言わないでしょう


受験者が持ち込むものにコーキングガンはないのです。(余計なものを持ち込んだら減点とか)


更に驚くのは溝の中に可とう性エポキシ樹脂というパテ状の製品を充填して、直ぐにその上に樹脂モルタ

ルを左官コテで押さえると言う工程となっているのです。

実際の建物に同じような事をすればその樹脂モルタルはすぐにひび割れてしまうと予想されます

それは可とう性エポキシ樹脂は硬化する時に10%近くは必ず収縮を起こすのです


ですから実際の現場ではノンブリードタイプのウレタンシーリング材で施工しています

そしてフィラーを掛けて仕上げ材を施すという方法がベストの方法なのです

可とう性エポキシ樹脂は素材がエポキシ樹脂ですから磨耗とか水に強いと言う事から床の目地等に使用

されています。

課題を作った人は適材適所の知識がないのでしょうか

それに、そもそもひび割れを補修するのに低圧注入工法があるのに、何故このUカット工法があるのか解

っているのでしょうか。


その使い分けは解っているのですか

価格が安くて簡単な方法だとしか知らないかもしれませんが、国土交通省の共通仕様書のなかにその使

い分けのヒントがあります。

ひび割れ幅が1㎜以上の大きなひび割れは建物の動きによって発生したと予想され、常にひび割れに動き

が発生するというような場合には低圧注入によって強固に固定するには問題があるので、目地を造りひび

割れに動きをさせるという目的のために採用する方法となっているのです。


つまり可動するひび割れのためにこの補修方法を使うという事なのです。


ひび割れの動きを自由にするための方法なのに、硬い樹脂で溝を埋め込んだり三面接着にしてしまって

どうするのですか・・・。



浮き注入課題の問題点

今時モルタルの付いているような建物は殆どありません

この試験は何を対象にしているのでしょうか


この課題に対してグリスポンプを持参して注入するとなつていますが、このポンプの需要が殆ど無くて

今や国産のポンプは殆ど無くなっています。

山田油機さんがやめてそして関東油機さんもやめて今はインド製があるようです(市場の話しです違って

いたらごめんなさい)

どちらにしても今の浮き注入施工はタイルの浮き程度です。

タイルが接着剤と剥がれているのなら注入なんかよりも貼りなおすのが正しい方法です


見えないところに接着剤を注入して重大事故発生防止の保証がてできるのですか・・


こんな市場しかないのにわざわざ国家試験の必要がありますか


他にも欠損部の補修は左官屋さんが生業としていてその専門家です

なぜ素人の注入職人さんが施工する必要があるのでしょうか、殆ど左官コテなど持つた事が無いのにそれ

で国家資格を持っているなんて本当におこがましい・・・と思います。


素人が施工してもいいのですが、そこに、どうして国家資格を与える必要性があるのですか。


そもそも他の職種と比べるとその知識の浅さと技能の低さには呆れます


例えばシーリングの技能検定の課題とか試験官はその仕事を生業(シーリング施工店)としている方達ばか

りで行っています。


試験の問題を作るのも検定員もプロ中のプロの方達が全国で協力して実行しています


今回の注入技能士の試験については塗装組合、防水組合等等で行い、注入を生業としている専門家は全く

参加していないと思います。


樹脂メーカー、器具メーカーも協賛として課題に参加もしていないようです。


つまり、素人が国家試験を作ってそして実行しているという状況なのです



いいのですか・・・ 検定委員となっている人達は・・・・・これでいいのですか。