写真は左側は超低粘度タイプ(さらさらの硬さ)、右側は高粘度タイプです(ヘラの上でも落ちません)
ひび割れの中にエポキシ樹脂を注入する場合には必ずひび割れ幅に適合した硬さの樹脂を注入する事が大切です。
適合するというのはどういうことなのかと説明すると次のような事なのです。
エポキシ樹脂の場合、メーカーの中には低圧注入用として低粘度タイプだけを揃えている会社があります
15年前頃は低圧注入は低粘度というのが常識のようになっていましたが、器具などの開発を行った後発のメーカーは、実際の現場ではそれでは完璧な注入は出来ないという事で他の硬さの樹脂も品揃えが始まりました。
現在では半数のメーカーでは超低粘度、低粘度、中粘度(マヨネーズ状)、高粘度(グリス状)の4種類を揃えています。
この4種類があれば、樹脂を良く理解している職人の場合にはそれぞれを混ぜ合せて無制限に硬さを作る事が出来ます。
適合とはひび割れの中に注入した時に樹脂が下方向に流れ出したり、注入してもひび割れの入り口で詰まってしまって中に入らなかったりしないことです。
丁度突き出しトコロテンのように途中で押し圧をやめてもそのままの形でひび割れの中に残っている硬さのことを言います。
参考に実験の結果でその適合硬さとの関係を報告します。
ひび割れ幅 0.05~0.1㎜の場合は 100~150mpa.sの硬さの樹脂 (超低粘度タイプ)
〃 0.2~0.5㎜ 〃 300~700 〃 (低粘度タイプ)
〃 0.6~1㎜ 〃 5500~9500 〃 (中粘度タイプ)
〃 1㎜以上 グリス状 (高粘度タイプ)
100~150mpa.sの硬さは牛乳より少し粘度がある程度です。
1cps(センチポイズ)は蒸留水の硬さです。(1cps=0.01p)
せっかく注入したのに時間と共に下の方へ流れ出すなどは何の為に注入したのか判らなくなります。
硬すぎる場合は今度は入りません。
この適合樹脂硬さは覚えなければいけません。
残念ですが国家資格の注入技能士の試験問題の中にも無いのです。
いい仕事をするには自分で理解して欲しいですね。
このようなことを知っていれば理想的な低圧注入工事は次のようになります。
どんな大きさのひび割れであっても最初の注入は必ず超低粘度樹脂を注入する。
これは樹脂の滑りを良くする為とひび割れの中で肌分かれしているような鉄筋との微細な隙間にも入れるためです。
次に入れるのは上記の適合樹脂を注入するという事になります。
そして充分な量を追加注入する・・・。
これで完璧な注入は行えます。
このような当たり前の方法を行なっている職人さんは殆ど『まれ』なのです。
第一に、樹脂の注ぎ足しが簡単には出来ない、グリス状タイプの硬い樹脂は注入出来ないなどの輪ゴムタイプの器具が圧倒的に売れているのですから。
お願いだから注ぎ足しができる器具を選んで使って欲しいと思います。
自分の家の基礎部分のひび割れを注入する気持ちで真面目にやってよね。
手抜きしたら、ひょっとして大地震で崩れるかもですよ。
奥さんと子供が怒るよ。