写真は低圧注入器具のフロッグで微細なひび割れ注入の実験の様子です。
ガラスと木質板を合わせてその隙間は0.3㎜にしています。
注入している樹脂は一番柔らかい超低粘度型の樹脂です。
上の写真は注入して3分経過しています。
下の写真は注入して7分経過しています。
下の写真はひび割れに対して柔らかすぎるために下のほうへ流下しています。
時間と共に丸い形が崩れて下のほうに樹脂が集まってきます。
このようにひび割れの幅と樹脂の硬さは適合性があるのです。
一種類では駄目です。
この画題の場合も次の工程では次の硬さの低粘度型を注ぎ足し注入を行うと完璧となります。
今回は住宅の布基礎のひび割れについて、訪問されたベロさんからの質問がありましたのでそのことについて報告します。
コンクリートのひび割れは表側から裏側に貫通しているものと表面付近だけのものがあります。
特に住宅の布基礎の場合は基礎のコンクリートの表面に化粧としてモルタルを付けますから、ひび割れは表面のモルタルだけなのか、コンクリートも貫通しているひび割れなのかを知る事が必要です。
この貫通しているのかモルタルだけなのかを知るには、床下に入り込み裏側のひび割れを見る事が必要となります。
表のモルタルのひび割れと裏側のひび割れの位置が合っていればそれは貫通しているということになります。
住宅の基礎部分のひび割れについては2000年4月から消費者保護の世界的な流れとして当時の建設省住宅局の主導の下に品質確保法律が施行されました。
この法律は建築した業者に建物の構造に関する部分の瑕疵(傷とか機能に欠陥があるなど)については10年間の補償を義務付けたものです。
基礎部分、柱,梁そして屋根、漏水箇所などとなっています。
漏水については壁構造の2×4工法を対象に(推察)しているのではないかと思います。
漏水によって柱の役目をしている壁が腐食した場合は危険ですからね。
構造用合板といっても薄くスライスした板を貼り合わせている接着剤が耐水性に優れているだけで素材はベニヤですからね。
この品確法の補償はあくまでも瑕疵が有った場合は補修で良いですよ程度のものです。
ひび割れたから改めてコンクリートを打ち直し、家も作り直しなさいというものでは有りません。
更に漏水して屋内の家電材が濡れて壊れたから新しい物を補償せよというような2次補償も含んではいません。
簡単に言えばひび割れた箇所については何らかの方法で無償で補修しなさいという事だけなのです。
ここで問題になるのは補修の方法なのです。
売り渡しをした業者はこの補償についてはなんとか安い方法で施工したいと思うし、買ったほうは金銭に関係なくベストな方法で修理して欲しいとなります。
業者側は当然の事ながら原因についてはひび割れは鉄筋コンクリートの宿命で不可抗力、または地盤が動いたりとか責任の所在を外的要因にしてはっきりした言い方はしません。
この説明は決して嘘という事ではありません。
私が業者としたらやはりこのような説明はすると思います。
ただ、私は補修についての方法については施主を安心させるような説明をしたいと思いますね。
どうせこれから10年間も補償期間があるのですから簡易的に補修をしても必ず再施工となるのでしょうから、どうせなら今ある最良の方法を多少費用が掛かっても施工方法として採用します。
ひび割れ補修における低圧樹脂注入工法は最少幅0.05㎜から注入が出来ます。
そして最大幅はフロッグの場合は5㎜までは可能です。
但しこの場合のひび割れはあくまで乾燥している場合、エフロなどで内部が詰まっていない事、そして裏側まで貫通している事が条件です。
ベロさんの質問の中で注入した筈なのに再発したのは何故・・・。
これは推察ですが前回の注入では殆どひび割れの中に樹脂が入らなかった為だと思います。
本当に注入したのなら、前回の説明のように注入された樹脂はコンクリートの倍ほどの強度を持っていますから決して同じ箇所が割れる事はありません。
このような不確実な注入方法が問題なのです。
(ベロさんの件と限定しているわけではありません。注ぎ足しをしない不確実な施工が一般化しているの です)
この事を、このブログで一番啓蒙したい事なのです。
輪ゴムを引っ掛けて注入する、素人でもできる工法といっているもので注入したのではないかと思います
ひび割れの幅にはそれに合った適合樹脂を入れなければ決して完全には注入はできません。
素人(兼業の方)の方は頻繁に注入工事はしない訳ですから余分な種類の樹脂は持っていません。
一種類の樹脂しか用意はしません。
何種類も用意したら採算が合わないものね。
専門業者のように数種類の樹脂を持つて現場にはいきません。
ひび割れは表面は0.3㎜であっても内部は0.2㎜とか0.1㎜になっている場合があります。
逆に表面は0.3㎜でも内側は0.7㎜も広がっている場合もあります。
こんなにひび割れの幅に変化があるのに一種類では確実な充填はできません。
残念なのですが低圧注入の専門業者は非常に少ないのです。
住宅の場合もこのような時に我々のような専門の業者を探してくれると良いのですが素人でもできるのならと近くの業者に頼んでしまうのです。
結果が見えない仕事ですから注入ができて無くても終わりました、で済んでしまうのです。
そんな施工でも大きなクレームにならないのは、ひび割れが原因で直ちに家が倒壊するなんて話は普段はあまり聞きませんし、例え地震がきてそれが原因で倒壊してもそんな時に原因なんて調べないものね。
ただ、長期的には色々な問題になる場合が多くなります。
ひび割れがあっても良いという事は絶対にありません。
ひび割れはその部分を脆くしてずれを発生させたり、エフロが流失したりして意匠的にも嫌ですね。
今は、施主が勉強して対応するしか方法は無いのかもしれません。