低圧注入工法の問題点を工事現場から報告したいと思います 全国に数少ない低圧注入工事を生業とする専門店への啓蒙も微力ですが広く行いたいと考えています

フロッグの行く先

コンクリートのひび割れ補修の専門です

擁壁のひび割れ注入の場合

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先週に見積りだけをして施工は決まらなかった擁壁と、数年前に注入した擁壁について報告しましょう


写真は上の2枚が今回調査した擁壁です。

下の写真は数年前に施工した擁壁ですがひび割れたところに沿ってコンクリートをハツリ取り、そして樹

モルタルで埋め戻しています。


今回に見積をした擁壁はさほど大きな擁壁ではありませんが築後5.6年経過しひび割れの補修は2回目だそ

うです。


最初にひび割れた時に壁面はひび割れに沿って小さな溝を造って何か防水剤の様なものを塗布していま

す。

そして上部はひび割れた箇所に何か塗材を塗って仕上げをしています。


ふぅーん・・・・・正直言ってそんな方法でひび割れが補修できるのなら、そもそも低圧注入工法なんて

存在はしないし、また誰も考えたりはしませんね。


それに、擁壁の目的は土留めですが、ひび割れた箇所の表面だけを目隠しして擁壁の意味があるのでしょ

うか。

たしかに微細なひび割れが直ちに擁壁の強度に影響するとは思えませんが、遊離石灰、錆汁が流れ出して

いてはコンクリートにとっては長期的には大いに問題でしょう。


ひび割れから地中の水か流れ出してコンクリートの中の遊離石灰を押し出して年々中性化していくことに

ついて問題とは考えないのでしょうか。


住宅、マンションの擁壁のひび割れについてよく思うのですが、時に、コンクリートの収縮のための誘発

目地が造られていない擁壁があるのです。


等間隔に目地を造られている擁壁には殆どひび割れは発生していないのは何故でしょうか・・・。


土木の場合は誘発目地を必ず造っていますから新しいものにはひび割れは殆ど発生していません

しかも誘発目地部分はコンクリートを一旦離していますから収縮で割れることは殆どありません

しかも目地には水に強いアスファルト系のシール材を挟み込んでいますから耐久性も問題はありません


今回のようにひび割れたからといってその部分に小さな溝を造ってシーリング材を埋め込んでも直ぐにひ

び割れは再発してしまいます。

シーリング材は背面からの耐水性は殆どありません。

コンクリートとの接着面のプライマーは耐水性についての性能は全くありません

シーリング材メーカーも裏側からの耐水性は全く考えていません



今回の擁壁のような場合の処理について理想的なのは、ひび割れ幅が1㎜程度の大きなものであればその

原因は収縮したものとは考えられませんので、面倒でも目地を新しく造って動きを吸収する構造にしてか

らから、ひび割れを注入によって固定するという方法がベストだと思います。

その目地についても幅は20㎜は欲しいですね、深さは理想的には15㎜程度で・・ok

そして目地のシールは可とう性エポキシ樹脂(通称弾性エポ)でシールしてしまえば背面からの耐水性もほ

ぼ完璧。


経験からすればこのような擁壁の場合にひび割れ幅が0.5㎜程度であれば既に若年コンクリートといわれ

る期間を過ぎていますから、ひび割れが発生した箇所全てを注入するだけでひび割れの再発は無いのでは

ないかと思います。


コンクリートは条件にも寄りますが、一般的には収縮はあっても伸縮の動きはありません。

建物のように構造が複雑な場合は押す力、動く時の力などがありひび割れは色んな箇所に発生しますが

擁壁のように単純な構造についてはコンクリートは伸縮のような複雑な動きはないと思っています


つまり一度割れたら直ぐに注入によってひび割れた箇所を固定してしまっても再発は殆ど見られないので

はないかと・・・経験から再発で呼び出されたことは無いので・・。


補修工事においてひび割れの原因が乾燥収縮であって更にひび割れ幅が0.6㎜程度以内であれば改めて伸

縮のための目地を造ると言う事は必要は無いのではないかと思います。


理想的には再発防止のために誘発目地を造ったほうが良いかも知れませんが、若年コンクリートの期間が

過ぎてしまえば、経験からすればその必要は殆ど無いという見解です。


新設の場合は予め誘発目地を造ると言う事は絶対に必要だと思います。



設計屋さんによっては擁壁については、コンクリートを長くつなげても収縮によるひび割れは無いと、そ

う思っている方が多いのでしょうか。


擁壁に目地があったとしてもそんなに意匠的に問題となりますかね・・・・。