低圧注入工法の問題点を工事現場から報告したいと思います 全国に数少ない低圧注入工事を生業とする専門店への啓蒙も微力ですが広く行いたいと考えています

フロッグの行く先

コンクリートのひび割れ補修の専門です

可とう性エポキシ樹脂ってなに?

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去年の夏以降あたりから補修が必要な危険な橋の補修工事が少しずつ出てきたようです

予算が付いたのか予算が余ったのか解りませんが補修を必要としている橋は沢山あるようです


橋梁のひび割れの補修には橋脚と橋桁の両方があります

橋桁については橋桁の裏側(下側)のひび割れから樹脂を注入します

橋脚については建物の壁と同じようにひび割れに器具をセットして注入します


今回はこのひび割れ補修について国交省が指定している方法に理解できないと思う点を報告します


ひび割れに低圧注入でエポキシ樹脂を注入してひび割れを固定してひび割れから雨水、湿気、酸素等を侵

入しないように補修するという事が目的だと思うのですが現在の現場ではこの固定という事が抜けていま

す。


エポキシ樹脂には一般に使用されているものと水の中で硬化する水中硬化型のものそして硬化後に変形す

る可とう性エポキシ樹脂があります。


現在この橋梁の補修に指定されているものはこの可とう性エポキシ樹脂の低粘度型なのです

この可とう性エポキシ樹脂は一般には弾性エボなんて言いますが決して弾性の能力を持った製品ではあり

ません。

一般の硬化後に硬くなるエポキシではなく多少は柔らかいのです

硬化後に曲げると少しですが曲がるのです

曲がる性格のために当然ですが接着強度は極端に弱くなります


何故このような材料を指定しているのかと言えばおそらくですが、ひび割れが動いた時に注入した樹脂が

その動きに追従できると信じているのだと思います。

恐らく樹脂のメーカーがあまり勉強しないまま国交省に売り込んだのだと思います

国交省の担当者はメーカーから見ればお客さんであり技術的には素人に近い訳ですからひび割れは躯体が

動いて割れるからその割れに追従する材料という理屈で売り込んだと思います。


このひび割れの動きに追従できる性能の材料と言う理屈は実際はあり得ません

少し考えればわかることなのにかなり昔からこの材料の指定は続いています


防水に使用する弾性シーリング材と言うものがあります

建物の目地にゴム弾性を持ったシーリング材を使用しますが、この目地に使用するシーリング材の仕様は

必ず二面に接着して目地底には接着させてはいけないといういわゆる三面接着は絶対にしてはならないと

いう大原則があります。


高層ビルの目地はかなり動きますからその動きに対応できるように目地にあるシーリング材も自由に動け

るように二面だけを接着させて伸縮させようとしています。

例えば輪ゴムを切って直線にして金属板2枚を重ねた上に輪ゴムの下面に接着剤を付けてそして重ねた金

属板をスライドして伸ばしたらどうなるでしょう。


輪ゴムは全部金属面に接着していますから伸びないで剥がれるか切れますよね

つまり例えば高層ビルの鉄骨に取り付けてあるパネルの目地にシーリング材が横と目地底に接着している

とシーリング材はその動きに追従できなくて切れてしまいます。

目地底を接着させないで横部分だけを接着させていると目地が開いた時にはシーリング材は自由に動けま

す。


この方法が二面接着の工法なのです

日本全国弾性シーリング材の納まりはこの二面接着しかありません

いまどきシーリング屋さんがこの原則を知らない職人さんはいないと思います

つまり例え多少柔らかい接着剤であろうとも躯体のひび割れの動きに追従させるのなら必ず二面だけの接

着でしか動きには追従できないという事です


ではこの可とう性の樹脂の場合はどうでしょう


ひび割れ幅か0.3㎜程度で長さは10mとか20mで奥行は150㎜~500㎜の形の中に注入しています


このひび割れの中に納まっているエポキシ樹脂の形状は0.3㎜厚さの長さ10m程度で奥行は15㎜から500㎜

で細長い敷布のような形になります。


つまり広い面積の面は全てコンクリートに接着していてフリーになっているのは表面の0.3㎜幅だけなの

です。

つまり動くというのはこの0.3㎜幅が広がって伸びるという理屈なのです。

解りやすく言えば僅か0.3㎜厚さの多少柔らかいシートを長手方向に伸ばすのではなく0.3㎜幅を広げよう

という理屈なのです。

僅か0.3㎜の厚さのもを0.1㎜引っ張るとそれは殆ど応力はゼロに等しいわけですから破断することは常識

です。

この注入された形状では三面接着になります


ですからわざわざ可とう性エポキシ樹脂を注入してもひび割れが動いたら直ちに破断するという事なので

す。

しかも仮に動きに追従できたとしてもひび割れが動いたら目地ではないのでその表面に塗装なり炭素繊維

なりの仕上げ材がある訳ですからその仕上げ材は割れてしまうでしょう


もしも過去に施工したものが割れていないというのならひび割れはそんなに動かないという事なのです


私の経験からすれば微細なひび割れは一度割れるとその後は殆ど動きません


例えば1㎜もある様な大きなひび割れの場合はそこに大きな動きが常時あると考えてその部分は固定しな

いで可動のための目地を造り二面接着のシーリング材を施工すべきです


注入工事は施工の結果がすぐには解らないのでこの問題は私はかなり重要だと思っています


かって大事故を起こした笹子トンネルもそのアンカーボルトの接着剤が劣化もしくは最初から入っていな

かったとしていますがこのアンカーボルトの取り付けもその施工の結果はすぐには見えない工法なので見

えないからこそ慎重に考えるべきだと思います。


このプログが橋梁の仕様を決めた国交省か外注の設計事務所の担当者の目に入ると良いのでが・・・・